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田島大介インタビュー

そびえたつ高層ビル群と中国語の屋上看板が生み出す異国の風景——紙とペンだけで圧倒的なスケールを描き出すアーティスト

幅4メートルの大型のキャンパスを眺めていると、都市の上空を飛んでいるかのような錯覚に陥る。圧倒的な密度で描きこまれた高層ビルディング群と、立ち並ぶ中国語の屋上看板が生み出すその都市は、1990年代の日本アニメを見た世代には、どこか懐かしささえ感じる風景に思える。

「都市風景」をテーマとしたグループ展「Contemporary Cityscapes vol.2」に参加した新進気鋭のアーティスト田島大介氏に、その作品の背景や今後の活動についてお話を伺った。(撮影:加藤甫)

田島大介《五金超大国I Metallicsuperpower I》2015年 田島大介《五金超大国I Metallicsuperpower I》2015年
田島氏の作品には、絵の中に引き込まれるようなディテールとリアリティがある 田島氏の作品には、絵の中に引き込まれるようなディテールとリアリティがある

——《無限の超大国 Superpower of eternal》は194×400cmの大作ですが、高層ビルに対してアイレベルがさらに高く、空から見下ろしているように描かれていて、絵の前に立つと強い浮遊感や没入感を得ます。構図など工夫されている点はどこでしょうか。

田島氏:高層ビル群を描くとき、自分の中で基本としている概念があって、作品全体のスケールに対してどれくらいのビルを描くのかという密度、これはキャンバスのサイズが変わっても、絶対に一貫しているものです。

実はパースなどもそれほど綿密に計算していないというか、現実の風景を見るときも、カメラや自分の目ではどうしても魚眼レンズでのぞいたようにゆがんだ部分が出ますから、理にかなった部分と崩壊した部分があります。そのバランスはよく考えながら制作しています。画面全体の比率に対して、どういう構図にするのか、どれだけのビルを描きこむのかなど、注意深く構成しています。

——エンジニアが図面を引くようにきっちりとした部分と、実際に目で見るとこう見えるだろうという部分が組み合わされているということですね。作品の制作にはどれくらいの時間をかけているのですか?

田島氏:この作品は2カ月くらいで仕上げようと決めていたので、あまり休みを入れないようなスケジュールを組みました。小さい作品はリラックスして描くことが多いのですが、大きな作品では制作開始から1日に最低何時間描くのか、タイマーできっちり測りながら描いています。自分を追い込んでいるからこそ、できることもあると思いますし、そういう状況も楽しみながら描いています。

——他にも高層ビル群を題材とした作品を多く描かれていますが、ビルをテーマとして選ばれたのにはどのようなきっかけがあったのですか。

田島氏:僕は小さいころから映画が好きで、たくさんの映画やアニメ作品を観ていました。特に1990年代以降の日本のアニメからは多くのインスピレーションを受けていて、子どもの頃からアニメに登場するようなメカやロボットを描いていました。押井守監督の映画『イノセンス』も大好きで、そこに描かれているアジアンテイストの都市風景からも影響を受けています。

最初の頃は、映画やアニメから自分が受けたイメージをもとに描いていましたが、ここ数年は台湾や香港を実際に訪れ、映画やアニメに描かれていた元ネタともいえる景色を自分の目で見られるようになりました。そうすると、当初の架空のイメージから描き出していたものが、より現実的に実際の景色から影響を受けるようになって、少しずつ作品も変化してきています。絵と現実が同調し始めている感じでしょうか。

『攻殻機動隊』をはじめとするSF作品と共通するアジア的な都市が原風景にあるという 『攻殻機動隊』をはじめとするSF作品と共通するアジア的な都市が原風景にあるという

——確かに高層ビルを上から見下ろす構図や、中国語で書かれた看板は、アニメや漫画に登場するシーンを連想させますね。題材にされた都市や風景はありますか?

田島氏:銀行の名前や中国の地名を使うことが多いです。台湾や香港で実際に見つけて気に入った文字もいくつかありますが、実際にある風景を切り取って残そうという意図はありません。リアル感にはすごくこだわっていますが、写真のまま描くようなリアリティではなくて、自分がアニメや漫画から受けた印象をもとに、いかにリアルに見えるかを考えながら描いています。

自分で気に入った漢字をアレンジしたり、オリジナルで考えた文字もあるという 自分で気に入った漢字をアレンジしたり、オリジナルで考えた文字もあるという

田島氏:ですから、特に実際の都市の取材などはしていません。僕は以前台湾に住んでいたことがありますし、ここ2年ほど中国語を勉強していますので、自然な形で中国語を身近に感じています。

漢字は日本語の元にもなっていますし、アルファベットとは違って一文字一文字にそれが表す概念が含まれています。文字自体に理由があるという点で、建築物と同じくらい文字にも惹かれています。絵の中に実際にある言葉を描くことで、そこに住んでいる人たちの生活感といったリアリティを与えられると思っています。

《金属強權超視圖III Hyper View of Metallic Superpower III》2016年 《金属強權超視圖III Hyper View of Metallic Superpower III》2016年

——プロフィールを拝見しました。愛知県立芸術大学のご出身とのことですが、大学でも絵画を専攻されていたのですか?

田島氏:いえ、大学の専攻は彫刻です。高校生のときに美術部で粘土や立体に触れる機会があって、その流れから進学しました。もちろん絵もずっと描いていましたが、当時はそれが職業になるとは思っていなかったです。プロになった今でも、あまり気持ちは変わっていないかもしれません。絵は仕事というより、描くのが好きだから描いています。

田島大介《untitled》2018年 田島大介《untitled》2018年

——《untitled》は産業機械や戦闘車両がモチーフの作品ですが、エンジニア的なテイストの作品が多いですね。

田島氏:これは2カ月ほど前に描いたものですが、高層ビルと同じように構造に惹かれて描いています。資料写真をもとに描くのではなく、普通の日常生活の中で目にするものを観察し、その記憶をもとに描いています。こういう小型の作品は基本的に販売しないで、もう何百枚も描きためています。いずれ一つの機会で、何百枚何千枚という物量で、一度に展示したいと思っています。

取材に同行した加藤カメラマンは、「対象や構図の捉え方が、写真そのものというより、写真家がイメージしている構図に近いように感じる」という。 取材に同行した加藤カメラマンは、「対象や構図の捉え方が、写真そのものというより、写真家がイメージしている構図に近いように感じる」という。
田島大介《金剛》 2016年 田島大介《金剛》 2016年

——2017年9月に香港で個展「FLYING ABOVE FORCED ISOLATION」を開かれています。海外での反応はいかがでしたか?

田島氏:日本とはお客さんの感じ方、言葉も文化も違いますから、いろいろ大変でしたが全体的には楽しかったです。何より僕の作品のテイストでもあるアジアの方に共感してもらえる部分があったので、嬉しかったです。

中国や台湾、香港などアジアを意識しながら活動していきたいと語る田島氏。 中国や台湾、香港などアジアを意識しながら活動していきたいと語る田島氏。

——これからもアジアを中心に活動を広げられるご予定ですか?

田島氏:はい、マーケットとしては、アジアを中心に考えています。僕は、ヨーロッパやアメリカという前に、もっと身近なアジアのことを勉強したいと思っています。特に中国とか、芸術のシーンもあまり日本では紹介されていないところがありますし、あまり知られていない部分ももっと勉強して掘り下げたいと思っています。僕自身がすごく中国をリスペクトしているので、いろいろなところも旅してみたいです。

僕は日本の画壇というか、絵画畑のトレンドとは違うところにいると思いますが、自分が目指す立ち位置としては、むしろ外にどんどん出て行って、まだ開拓されていないところを耕したいと思っています。
 

田島大介氏は、2018年10月26日(金)~29日(月)に台湾の台北世界貿易センターで開催される「ART TAIPEI2018(台北国際芸術博覧会)」にDer-horng Art gallery(台南)から出品を予定している。

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