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BoCo 謝 端明氏インタビュー

製造業の常識を破壊して海外へ飛び出す——骨伝導イヤホン「BoCo」

BoCoは2015年に設立し、「全ての人と音をもっと良い関係に」をビジョンに掲げ、骨伝導技術を活用したコミュニケーションデバイス「earsopen(EO)」シリーズや「docodemoSPEAKER」と、プロダクトを次々と開発・生産・販売しているベンチャーだ。2019年7月には、世界初の完全ワイヤレス骨伝導イヤホン「earsopen PEACE」を発表し、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」で同製品のプロジェクトをスタート。開始1日で目標金額100万円を大幅に超える1200万円もの支援総額を集めている。

会社設立4年目にして、東京本社、東京工場に加えて、直営のboco STOREを東京と愛媛に2店舗、そして中国と韓国に子会社を設立。Made in Japanで世界最高レベルの骨伝導技術を活用した製品を目指す開発スピードやグローバル展開はどのように成し遂げられたのか。代表取締役社長の謝 端明(しゃ はたあき)氏に話を伺うと、「ハードウェアベンチャーという表現は好きではない」「ギフト券を配って、回答を集める市場調査に意味はない」「2カ月かかる金型を3週間で実現する」など、独自の戦略を明かした。(撮影:加藤甫)

注目される完全ワイヤレス骨伝導イヤホンの技術

——世界初の完全ワイヤレス骨伝導イヤホンのコア技術はなんですか。

謝:当社の全てのベースは、独自開発した特許技術のこの小さなデバイスです。直径10mmで、4〜4万Hzの広い周波数帯域の音を再生できます。性能的には、世界最高レベルを誇ります。

BoCo 代表取締役 謝  端明氏。 BoCo 代表取締役 謝 端明氏。

——小さいのに音域が広いですね。骨伝導ってここまで低音を出せるものなんですね。

謝:よくご存知ですね。再生周波数帯域の下の数値が低ければ低いほど、低音がよく出て、上の数値が高ければ高いほど高音が出る。当社のデバイスは、広い周波数帯域の音が再生できるので、低音もクリアに聴こえると好評を得ています。

ハイレゾは、2万Hz以上の高音を出せていれば、条件のひとつをクリアしているといわれていますが、実は人間の耳で2万Hzはなかなか聴こえない。でもハイレゾ音源だと確かに音がきれいに聴こえますよね。そこに客観的な認識がある。例えば、和太鼓って近くで聴くと、耳だけじゃなくて何か感じるものがありますよね。当社の骨伝導デバイスも周波数帯域で音をクリアに再生するだけじゃなくて、骨伝導で電子パルスを発生させやすくするところに力を入れ、従来の骨伝導デバイスとは一線を画す製品になっています。

BoCoのコア技術である直径10mmの骨伝導デバイス。 BoCoのコア技術である直径10mmの骨伝導デバイス。

——骨伝導の効果はいかがですか。

謝:当社の製品を使い始めてみると音量が足りないという声を聞くことがあります。有効性には個人差がありますが、1カ月ほど使っていると鼓膜への負担が軽減し、聴覚神経が発達して使い始めたときよりも、音のボリュームが大きく聴こえるように感じたという報告もあります。耳の聴力は消耗品です。使えば使うほど、聴力は下がっていきます。スマートフォンやゲーム機の音声をイヤホンから大音量で聴くライフスタイルは、難聴のリスクも高まりますが、当社のイヤホンは難聴リスクの救いの技術として期待されています。

——ハードウェアベンチャーという表現が好きではないと伺いました。

謝:当社もハードウェアベンチャーと言われるんですが、ハードウェアベンチャーという表現が嫌いなんです。なぜかと言うと、自社で技術を持ち、自社のコア技術を研究開発し、ものづくりに励むものづくりベンチャーを目指しているからです。自社工場も都内に設置し、生産技術も持っています。自分たちで技術を持つことで初めてノウハウがたまっていきます。最近のベンチャーは、アイデアを企画して、深センの工場に丸投げすることが多いと聞きます。それではものづくりではなく、企画会社になってしまう。日本はせっかくのものづくり技術がどんどん衰退してしまっている。東京で起業する製造業だけ見ても、企画から製造まで自分たちでカバーできるベンチャーは少ないと聞いています。日本は技術でものづくりできなければ、何をもって海外と貿易していくのか。当社はMade in Japanに徹し、独自の技術で人のために製品を生かしたものづくりに励んでいきたいのです。

earsopen(EO)の製品シリーズ。 earsopen(EO)の製品シリーズ。

——開発スピードが速くなる秘訣(ひけつ)はありますか?

謝:ある企業と1年くらいかけて打ち合わせしていたときの話ですが、何度も打ち合わせを重ねても「もうちょっとこの機能を検討したいですね」と、少し議論のポイントが変わっただけで、2時間も3時間も議論していることがありました。そんな状態では開発スピードは上がりません。まずは開発プロセスを見直し、創造的な破壊、改革をしなければならないのです。金型を製造するのに2カ月程度かかるのが常識といわれますが、誰が決めたのでしょうか。3週間で作れるところはないのでしょうか。常識にとらわれずに探してみると見つかります。

商品の開発もまずはゴールを明確にしないといけません。当社は同時進行で製品10種類の開発を進めています。通常のメーカーさんだったら、少なくとも30〜50人くらいは開発メンバーが必要だと思いますが、当社の開発チームは5人です。製品ごとにリリースしたい期限を相談して決めながら、開発もひとつひとつ順番に進めるのではなくて並行して開発する。むちゃなことはもちろん言いません。KPI(重要業績評価指数)もありません。タイムカードもありません。やりくりしながら進めることで、1年間はかかる開発期間を3分の1に縮めることができます。厳しいこともありますが、どうやればできるか想像しながら進めています。

——製品のフィードバックやマーケットリサーチはどのように進めているのでしょうか?

謝:マーケットリサーチはしません。マーケットは自分たちで作り出していかなくてはいけない。調査会社に依頼しても、謝礼としてギフト券をもらうための回答にはなんの意味もありません。街中で100人にインタビュー調査をしたら、90人が「良いですね」と答えると思います。その90人に「この製品は2万円します。買いますか?」と聞くと実際に買うと答える人は少ないでしょう。これでは、結果的になんの意味があったのか分からない。実際に買って使ってくれているユーザーさんの声は貴重です。そこにはしっかりと耳を傾けて改善していかなくてはいけない。

社内でもリサーチはしません。当社の製品の中に聴覚補助モデルがありますが、開発を始める前に補聴器のカタログや雑誌を買って情報収集していました。それを見て、カタログや雑誌を購入することを禁止しました。なぜなら既存の補聴器を参考にしていては、新しいものは作れないからです。今の補聴器の常識を知らないから価値があるんです。

earsopen PEACEの聴覚補助モデルも販売している。 earsopen PEACEの聴覚補助モデルも販売している。

——中国に子会社を設立し「CES ASIA 2019」「AWE 2019」等に出展するなど中国でも積極的に事業展開されていますね。中国へ進出する日本企業にアドバイスをお願いします。

謝:日本と本質的なところは変わりませんが、中国の販売店は自分のもうけだけを考えている場合が多いので、日本企業はそれを理解してだまされないようにしてほしい。よく言われていることですが、中国で何か製品を販売しようと思うなら、すぐに偽物が出回ると思ったほうがいいです。今の中国の製造能力は非常に高い。数カ月間あれば、まねされてもっと良いものが市場に出回るでしょう。

中国のECサイト市場の急成長が話題になってきていますが、知名度を上げるためにはECサイトだけでなく、実店舗でも販売すると良いと思います。あとは「淘宝」(編注:アリババグループが運営する中国最大のECサイト)には手を出さないことですね。良いもの悪いものもそろっていて、自社製品のブランドイメージが悪くなることもあるので気を付けたほうがいいでしょう。

中国の上海で開催されたCES ASIA 2019で展示している様子。製品の体験希望者が集り盛況だった。 中国の上海で開催されたCES ASIA 2019で展示している様子。製品の体験希望者が集り盛況だった。

——今後の展開について教えてください。

謝:海外は中国と韓国に子会社を設立し、それぞれ販売代理店とも契約して事業展開を広めていきます。日本国内は、大手家電量販店や取り扱い店舗を増やし、クラウドファンディングサイトのGREEN FUNDINGとも切磋琢磨し、BoCoのブランディングを強化していきたい。今後もより良い製品を作りながら、製品の認知度を広げてもっともっと事業を極めていきたいですね。

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