Arduino SrlのCEOが来日、分裂中のArduinoの現状と今後を説明
2015/08/05 17:30
Maker Faire Tokyo 2015に合わせて来日したArduino SrlのCEO、Federico Musto氏が記者会見を開き、Arduinoが分裂した経緯と今後発表予定の製品やサービスについて説明した。
Arduinoは2005年にイタリアで誕生したオープンソースのマイコンボードで、イタリアのSmart Projects Srlがハードウェアの開発と製造を、米国のArduino LLCがソフトウェアの開発やコミュニティー運営を担当してきた。
その後、Smart Projects SrlがイタリアでArduinoの商標を登録し、Arduino LLCが米国で商標を登録。2014年に2社間で商標権を巡って係争が起きた。その後、LinuxのディストリビューターRed Hatで、欧州、中東、アフリカ地域のゼネラルマネージャーを務めたFederico Musto氏がSmart Projects Srlを買収し、Arduino Srlと社名を変更した。
現在、Arduino LLCとArduino Srl間で、互いの商標権の無効を訴える訴訟が継続中だ。日本国内ではArduino SrlがArduinoの商標を登録している関係で、Arduino LLCがArduinoと名の付く製品を販売することは商標法違反になるという。
Federico氏は係争中のArduino LLCとの今後については、和解に向けて株式を51%と49%ずつで持ちあうといった具体的な提案をしたが、Arduino LLC側から拒絶されているため、お互いがそれぞれの道を進むしかないと考えていると話した。
Federico氏によれば、Arduino Srlでは69人の社員が5カ国の拠点で開発や製造に従事している。今後、Arduino IDEに変わる開発環境となる「Arduino Studio」と「my Arduino.org」を発表した。Arduino Studioは現在α版、my Arduino.orgは開発中だ。my Arduino.orgはJavaScriptベースであり、Webブラウザ上で開発が可能になるという。
ハードウェア面では発表済みのWi-Fi通信可能な「Arduino Yun」と、新製品「Arduino Tian」 を紹介した。日本国内での販売に向けて技術基準適合証明(技適)を取得する予定だ。また、入門キットとして、170ページのマニュアルがついた「Arduino Starter Kit(日本語版)」を、翻訳を担当したスイッチサイエンスを通じて販売する。
さらに、LinuxにおけるLinux Foundationのような財団としてArduino Foundationを立ち上げる構想も発表。Arduinoのディストリビューターやベンダー、開発者が協議できる場を作り、ユーザーの教育や互換性を保証するラベルの発行など、開発者や研究者、企業によるコミュニティーを準備しているそうだ。
今回の会見の進行を担当したスイッチサイエンス代表取締役の金本茂氏は、会見に先立ち「どちらにしても絶対的な悪人がいる話ではなく、何らかの方法で2社が一緒になる方法がないか期待している」と話したが、現在相互に訴訟を起こしており、製品についてもそれぞれ別の道を歩んでいる状況であり、和解と統合に向けての道のりは長いようだ。