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赤外線を電気エネルギーに——ポーラロン励起を利用する新原理のペロブスカイト太陽電池

ヘルムホルツ協会ドイツ電子シンクロトン(DESY)に集まった研究チームが、赤外領域の光を電気エネルギーに変換する新型ペロブスカイト太陽電池の基本原理を見出した。実用化への課題はいまだ残っているが、研究がさらに進展すれば、従来とは異なるメカニズムの太陽電池を世にもたらす可能性がある。

光により励起された電子と結晶格子振動の相互作用から生じる”ポーラロン励起”を利用し、赤外領域の光を電気エネルギーに変換する。これが研究チームによって築かれた基本原理だ。電子が誘電体中を移動すると、結晶格子は静電相互作用を受け、平衡位置からずれて分極する。電子はこの分極を引きずりながら動くことになり、移動速度が遅く有効質量が大きい1つの粒子のような挙動を示す。この仮想的な粒子が、「ポーラロン」と呼ばれるものだ。

従来の太陽電池では、電子と格子振動の相互作用は望ましくない損失を招き、エネルギー変換効率を低下させる。だが、フラクタル構造を持つマンガナイト系ペロブスカイトの場合、この相互作用を積極的に活用できることが、研究によって明らかになった。このタイプのペロブスカイト太陽電池におけるポーラロン励起は、フラクタル構造のもと一定の動作温度で生起して十分に長く継続するので、顕著な発電効果を発揮する。

こうした新しいメカニズムを持つ太陽電池は、材料、理論物理、化学、X線の専門家による学際的な連携のもとで開発された。特に研究の鍵となったのは、光速に近い速度で移動する荷電粒子が磁場で曲げられるときに発生する放射光を用いた構造解析手法だ。「分子単位で動的プロセスを測定するには、研究チームが用いたDESYの加速器PETRAⅢや、今年稼動するヨーロッパ自由電子レーザーXFELのような高輝度で超高速のX線源の使用が必要だ」と研究チームのSimone Techert教授は語っている。

残された問題は、先述の効果を誘起するのに、現状では太陽電池を約−35℃に冷却しなくてはいけないことだ。太陽電池として実用化を図るには、ポーラロン励起をより高温で発生させる必要がある。研究チームはそれを実現するため、さらに材料を探索して最適化しようと試みている。この試みが成功すれば、豊富な資源のあるペロブスカイト酸化物を使って、新原理の太陽電池や光化学的エネルギー源を生み出せるという。

fabcross for エンジニアより転載)

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