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“食べられるロボット”が現実に? ゼラチンで空圧アクチュエータを作製

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームが、食べられる材料を利用して空圧アクチュエータを開発した。将来的に、体内に入り込んで必要な場所に直接薬を届けてくれて、さらに代謝可能なロボットを現実のものにできるかもしれない。本研究の成果は2017年3月4日、論文情報サイト「arXiv」上で公開された。

生体適合性や生物分解性を持つ材料、食べられる材料から機能性デバイスを作る研究が盛んだ。すでに、生体内で働くセンサ、トランジスタ、バッテリ、電極、コンデンサなどの研究が報告されている。体内に摂取可能なセンサのいくつかは、米FDAなどの承認を経て市場化段階にある。またMITは、誤って飲み込んだ異物を胃の中から取り出せる折り紙ロボットを開発中だ。

このような技術は将来、ドラッグ・デリバリーや患部に対する直接的な治療など、医療分野で革命的な新技術を生み出す可能性がある。EPFLのインテリジェント・システム研究所の研究チームは今回、食べられる材料を利用したアクチュエータの開発に取り組んだ。体外からの電気的・磁気的遠隔操作を使わず、空圧で動くロボットの可能性を追求したという。

研究チームが考案したのは、ゼラチン・グリセロール合成物からできた90mm長のデバイスだ。これを用いたアクチュエータは多数の分離された部屋で構成され、各部屋は圧縮空気の注入により選択的に膨張する。その結果、構造全体を曲げたり、力を発揮したりできる。論文では、25kPaの空圧により、曲げ角度は約170°まで可能であり、0.34Nまでの力を出せると報告。これまでソフト・ロボットに使用されてきたエラストマーとほぼ同じ性能を発揮できることになる。

研究チームは、2つのアクチュエータを組み合わせることで、リンゴ、オレンジ、ゆで卵など、さまざまな物体をつかめることも実証した。

確かに研究はいまだ初期段階にある。だが、食べられる材料から作られたセンサやバッテリなどをこのアクチュエータと組み合わせれば、より高機能なデバイスを生み出せるものと研究チームは期待している。ヘルスケア以外の分野に応用できる可能性もあるという。

例えば、レスキュー・ロボットとしての用途を切り開く可能性がある。到達しにくい場所に閉じ込められた生存者の位置を特定し、その情報をレスキュー本部にフィードバックした後、生存者は生き残るために到着したレスキュー・ロボットを食べる——といったアイデアもあるという。さらに研究チームはこのコンセプトをベースに、ロボットがその一部を消費してエネルギーを発生させて寿命を延ばすという自食作用を備えたデバイスの可能性も提案している。

fabcross for エンジニアより転載)

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