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即座に型取りして真空成型できる——慶應義塾大学、インタラクティブバキュームフォームシステム「ProtoMold(プロトモールド)」を開発

慶應義塾大学は、ラピッドプロトタイピングのためのインタラクティブバキュームフォームシステム「ProtoMold(プロトモールド)」を開発した。

ProtoMoldは、科学技術振興機構(JST)が推進する戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)の1つ、ERATO 川原万有情報網プロジェクトに属する研究グループの成果だ。山岡潤一氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教)と筧康明氏(慶應義塾大学環境情報学部 准教授)を中心とした研究チームが開発した。

photo PC制御されたピンが瞬時に型をつくる

ProtoMoldは、PVC(ポリ塩化ビニル)やPETなどの熱可塑性樹脂製シートを使用する、“2.5D”プリンターとでもいうべき造形装置だ。12×8本のピンをジェスチャー入力や3Dスキャンデータを使って位置決めして造形物の型とする。

photo 本体上部に樹脂シートをセットし、軟化するまで加熱する

その上に、加熱して軟化させた樹脂シートを乗せ、吸引器で吸引して型に定着・硬化させるという仕組みだ。樹脂シートは、再加熱することで平らになり、何度でも再利用することができる。

例えば、提供する食品の形状に沿ったトレイを即座に作ったり、スキャンした顔のデータをもとに顔のデータを印刷したお面を作ったりと、多彩な用途を想定する。シートの上に特殊な導電インクで回路を印刷すれば、ファブリケーションしたものに電気回路としてのファンクションを持たせることもできる。

photo 立体地図とお面の造型例
photo トレイ形状や導電インク印刷例

研究チームの山岡氏はこの研究を、人とコンピューターをどうつなぐのか、HCI(Human Computer Interaction)という分野からのファブリケーションに向けての取り組みだと説明する。

ProtoMoldが応用する技術自体は、新しいものではないという。金属製のピンを使ってメッセージなどを表示する「ピンディスプレイ」や、樹脂を使って真空成型する「バキュームフォーマー」は実用化されている。また、3Dプリンターを利用した立体造形で型を作成することも多い。

しかし、3Dプリンターでの造形は時間がかかり、ピンディスプレイは型の情報としてその場から取り出すことができず、バキュームフォーマーでは製品から型を起こすのが手間などの課題があるという。

photo 開発者の山岡潤一特任助教

「シンプルにいうと、高速かつ材料の再利用がきく3次元立体造形ツールを作りたかった」と山岡氏は開発の動機を語る。「ProtoMoldは、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタルファブリケーションツールと比べ、やり直しが出来るうえに出力が早い。型の形状を即座に変えることができるうえ、熱可塑性樹脂のシートは再利用可能なため、何度でもリトライしながら形状を最適化できる。ファブリケーションのゴールや完成イメージに近づくためのプロセスを、何度も高速で回すことができる」と、そのメリットを説明する。

新たなHCIを実現するProtoMoldだが、課題もあるという。今のモデルは合計96個のブロックをリニアアクチュエーターで動かしているが、解像度は決して高くはない。例えば加熱した1本の細いピンをCNCのように動かせば、型の精度は上がるが時間がかかる。速度を最重要視しつつ解像度も上げ、他のデジタルファブリケーションツールと連携させることも今後は考えたいとのことだ。

ProtoMoldの産業用途としては、多様な製品から早く型を写し取り、それに適した梱包材がすぐにできるという、梱包材製造に活躍の場があるとみている。そしてさらにその先には、変形するシートによる究極のものづくりがあるのではと、山岡氏。

「食品のトレイや家具など、現状のものづくりは“作って終わり”だ。ProtoMoldと樹脂シートを使えば、必要な時にその場で作り、使い終わったらシートに戻すという究極の断捨離、製造コスト、輸送コストの大幅な削減ができる可能性がある」と、山岡氏はProtoMoldが目指す未来を語っている。

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