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人体の動きから発電する超薄膜デバイスを開発

米ヴァンダービルト大学の研究チームは、人体の動きからでも発電できる超薄膜デバイスを開発した。黒リンのナノシートを使った機械化学効果という新しいコンセプトを利用して、人体の日常的なゆっくりとした動きからでも、電力の生成に成功した。研究成果は、『ACS Energy Letters』誌に6月21日オンライン公開されている。

手回し発電機やランニングマシンのように、人力で発電するのは難しいことではない。ただ、立ち上がったり座ったまま手を動かしたりといった、人の日常的な動作はとても緩慢で、周波数にすると10Hzに満たないものが多く、このような低周波数的な運動からエネルギーを取り出すのは容易ではない。例えば圧電素子などを使えば歪みを電気エネルギーに変換することも可能だが、高い変換効率を得るためには100Hz以上の周波数が必要だ。

研究チームはこれまで、リチウムイオンバッテリーに関するこれまでの研究から、バッテリー材料が応力を受けると作動電圧が変化するという機械化学(メカノケミストリー:MechanoChemistry)効果を実験的に確認していた。このバッテリーを引き延ばすと作動電圧が上昇し、逆に圧縮すると電圧が低下するという現象が、今回の研究のもとになっている。研究チームはさらに、正極と負極を同一材料とすることで、電力を貯蔵するのではなく、より効率的に電力を取り出せるようにした。

加えて研究チームが着目したのは、黒リンの2次元構造シートである「フォスフォレン」だ。原子数個分以下の厚みしかない2Dナノシートが3次元素材とは異なる物性を示すことは、例えば炭素原子の2Dシートであるグラフェンなどでよく知られている。リン原子の2Dシートであるフォスフォレンは、平面構造で良導体であるグラフェンとは異なり、波状構造をなしてバンドギャップが大きいなどの電気的特徴があり、近年研究者らの注目を集めている。

研究チームがフォスフォレンの超薄膜を使って作成したプロトタイプデバイスは、曲げることで1平方フィート当たり40μWの電力が得られ、0.01Hzの遅い動きでも発電を継続することが確認された。研究チームの機械工学科Cary Pint助教授は、「このデバイスは計算上、25%以上の効率で作動することが判った」と、その成果を説明する。この超薄膜デバイスは外観や肌触りに影響がないほど薄い素材であるため、繊維などへの組み込みも可能だという。

同氏は、「将来のパーソナル・デバイスでは人体の動きから直接エネルギーを引き出すこともできる」とし、人体のわずかな動きからでも電力を供給できるウェアラブル発電デバイスの可能性を語っている。

fabcross for エンジニアより転載)

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