3Dプリンティングによる人工歯を実用化——産総研など、歯科材料の医療機器としての承認を取得し実現
2018/07/20 14:00
産業技術総合研究所(産総研)は、アイディエスと共同で、3Dプリンティング用コバルトクロム合金粉末の薬事承認を取得し、破損しにくく患者に適した人工歯(入れ歯)を、3Dプリンティングにより短時間で製造する手法を実用化した。
この製造手法は、まず口腔内のデータを取得し、歯科医師の指示に基づき患者に最適な形状の人工歯を設計。そのデータに基づき、医療機器として厚生労働省に登録された3Dプリンターを用いて積層造形し、表面仕上げの後、臨床使用する。
積層造形材としてコバルトクロム(Co-Cr-Mo-W)合金粉末を利用する。この素材の臨床使用のためには、歯科材料の医療機器として厚生労働大臣の承認が必要であったため、薬事製造販売承認申請をアイディエスが担当し、産総研も協力して、2018年4月27日クラスⅡの医療機器として製造販売承認された。
この積層造形法では、従来の鋳造法と比べ、ワックスなどの消耗品が不要で、材料の無駄も少ない。夜間に造形すれば次の日には仕上げ加工でき、製造期間は3分の1以下に短縮できるという。
また、今回のコバルトクロム合金粉末を用いた積層造形材の金属組織は、透過電子顕微鏡を用いて観察すると、粒状のかなり微細な組織となり、鍛造(鍛錬)材に見られる微細な鍛造組織と類似していた。
引張り試験を行った結果、積層造形方向を変えても影響は小さく、また歯科鋳造材と比べ、高い強度と高い破断伸び(延性)を持つことがわかった。疲労試験の結果も、歯科鋳造材の200MPaに比べ、500MPaと2倍以上高かった。
同社は今後、この積層造形技術の保険適用を目指す。また、新たな材料であるコバルトクロム(Co-28%Cr-6%Mo)合金の国産粉末での認可を目指す。さらに、敏感なアレルギー患者向けに、チタン材料での人工歯の開発も目指すとしている。