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0と1では解けない問題がある——アナログコンピューターが再び注目を集める理由とは

Zoltan Toroczkai

米ノートルダム大学の研究チームは、既存のデジタルコンピューターが苦手とする多変数問題について、アナログ「ソルバー」を利用することで、より最良の解を速く導くことができると発表した。研究成果は2018年11月19日の『Nature Communications』に掲載されている。

アナログコンピューターは20世紀初頭から中頃まで、潮位予測器や弾道計算機をはじめ、NASAの初期ロケットの打ち上げにも使われてきた。始めは歯車や真空管を、後にトランジスターを利用し、電圧などの測定値を計算結果としていた。例えば2つの数の和を計算したい場合、その2つの数に対応する電圧を加算するだけでよく、リアルタイムに結果が得られる。ただ、アナログコンピューターは変数の再設定が難しく、用途が限定されがちで、ノイズの問題もあることから、量産トランジスターや集積回路の台頭に伴い、より柔軟性のあるデジタルコンピューターに取って代わられた。

デジタルコンピューターの大きな特徴は、0と1というバイナリ(二進数)に依存していることで、プログラムがシンプルにできる一方、「NP(Non-deterministic Polynomial time、非決定性多項式時間)困難問題」を解くことができないという欠点がある。その例が「巡回セールスマン問題」だ。セールスマンがリストにある全ての都市を巡回して最初の都市に戻ってくるルートのうち、最も効率的なルートを求める問題だ。都市の数が増えると、指数関数的に難しくなる。

研究チームによると、こうした最適化問題は「ある答えを導いたとして、それが最適だと決定することができない。より良い解が存在しないと結論付けることは、その問題自体と同じくらい難しい」のだという。その解法のひとつとして、再びアナログコンピューティングに注目が集まっている。

研究チームは、常微分方程式(ODE)に基づく連続時間決定論的システム(CTDS)をアナログソルバーとして、様々なNP困難問題の検証をした。統計的分析を利用するこのソルバーは、デジタル処理よりも速く最適解を予測できる可能性があるとしている。今回はデジタルコンピューター上で数値的な実装を行ったが、今後はさらに速く効率的に動作できるアナログ回路に直接実装したいと考えている。

NP困難問題を解くことができれば、スケジューリング、タンパク質の折り畳み問題、生物情報学、医療用画像処理など、多変数を必要とする問題においてより良い解を得られる可能性がある。研究チームは「ノイズ制御といった問題も解決する見込みだ。アナログコンピューターは今のコンピューターよりずっと良い働きをするだろう」と期待をこめている。

fabcross for エンジニアより転載)

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