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太陽の熱エネルギーで海水を濾過、飲み水不足問題の解決へ

トリノ工科大学は2019年1月7日、太陽熱エネルギーを利用して海水を淡水に濾過し、低コストで飲み水を確保するための装置のプロトタイプを考案したと発表した。開発技術における太陽エネルギー当たりの淡水生産量は、従来技術の2倍に相当するという。

国際連合食糧農業機関(FAO)の推計によると、2025年までに約20億人が日用飲料水を確保できなくなる見通しだという。解決策のひとつは海水から飲み水を確保することだが、海水から塩分を除去するには、川や井戸から水を汲み上げるよりも、10~20倍の電力を必要とする。この問題を解決するため、同大エネルギー部門の研究チームは太陽熱エネルギーを応用したシステムを考案した。

開発したプロトタイプでは低価格の多孔物質を用い、毛細管現象により海水を集めている。そのため、高価で運びにくいポンプの使用を避けることができる。従来技術では高価な海水ポンプや制御システムなどの部品を使い、導入とメンテナンスのために専門技師も必要だが、開発技術は付属的な機器が不要であり、安価で簡単に導入と修理ができる。

また、集めた海水は太陽エネルギーで加熱し、塩と水蒸気に分離している。ここでは太陽エネルギーの効率的な活用に着目し、蒸発プロセスで使う太陽熱をリサイクリングすることにした。その結果、1平方メートル当たりの太陽光暴露で、従来技術の2倍となる1日最大20リットルの生産が可能になった。

開発技術は、インフラ設備が整っておらず飲み水が慢性的に不足している海岸沿いの地域には魅力的だ。さらに、津波や洪水で数日~数週間電気も水道にもつながらず孤立するなど、緊急事態における低コストで安全な飲み水の確保にも役立つという。

fabcross for エンジニアより転載)

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