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5G時代に活用できるフレキシブルCNT薄膜パッチアンテナを開発

Photo by Jeff Fitlow

米ライス大学工学部の研究チームは、カーボンナノチューブ(CNT)薄膜でできたマイクロストリップパッチアンテナを開発し、銅箔を用いたアンテナと同等の放射効率を持つことを確認した。軽量薄型、柔軟、丈夫なアンテナとして、来たる5Gネットワーク時代の電子機器への活用が期待される。研究結果は、2019年5月24日付けの『Applied Physics Letters』で公開されている。

化学及び生体分子工学部のMatteo Pasquali教授の研究室では、以前からCNTを利用したアンテナの研究を行っている。2017年には2.4GHz帯のCNTファイバーアンテナを開発して、標準的な銅アンテナと同等の性能を持つことを発表している。今回の研究は、それをさらに発展させたものだ。

研究チームが作製した薄膜は、CNTがせん断力のために自己整列し、配向がそろっている。その薄膜をアンテナに使用することで、軽量で柔軟性と耐久性を持つだけでなく、より高い周波数でも使用することができることが判明した。

薄膜作製はまず、酸ベースの溶液を使ってCNTを溶解することから始まった。単層、長さ8ミクロン程度まで溶解したCNTを広げると、せん断力のために整列した薄膜が形成される。この薄膜の大きさは、およそスライドガラスくらいで、厚さは1~7μmだった。

この薄膜からマイクロストリップパッチアンテナを作製し、5、10、14GHzでの動作検証を実施。10GHzと14GHzでは放射効率94%に達し、銅アンテナと同等と確認した。また、個々のCNTは、ファンデルワールス力によって引き付け合っているので、機械特性は、銅よりもはるかに優れているという。

今回使用した液相法の場合、基本的にデバイスに塗布することが可能だ。また、通常利用されることの多い気相成長法に比べて、よりスケーラブルで連続的なアンテナ製造に向いていると、筆頭著者のAmram Bengio氏は語る。Bengio氏は、この研究論文で博士号を取得した後、さらに材料開発を進めるため、会社を設立している。

新しいアンテナは5Gネットワークだけでなく、航空機、特に重量に制約がある無人航空機にも適しているという。また、石油やガスの採掘現場でのワイヤレステレメトリーや、様々なIoTデバイスへの適用も期待される。

fabcross for エンジニアより転載)

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