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小型から大型ロボットアームまで応用可能なハプティックフィードバックシステム「Mantis」

英ブリストル大学の研究チームは、2019年10月20日、軽量かつ手頃な価格で、特別なスキルがなくてもシステムを構築できるハプティック(触覚)フィードバックシステム「Mantis」を開発したと発表した。この研究は、2019年10月20日~23日にアメリカのニューオーリンズ州で開催されたユーザーインターフェース分野のトップカンファレンス「UIST ’19」で発表され、会議記録『UIST ’19 Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology』に論文が掲載されている。

従来、人間と電子機器とのコミュニケーション手段は視覚と聴覚の2つしかなかったが、ハプティックフィードバックは、電子機器に新しいコミュニケーション手段をもたらすという。触覚をシミュレートすることで、人間がコンピューターや他のデバイスに触れることができるだけでなく、コンピューターが人間に「触れる」ことができるという。

ブリストル大学コンピューターサイエンス学科の研究チームリーダー、Ann Roudaut博士は「人間は触覚という素晴らしい感覚を既に持っていますが、Mantisは人間が3Dの対象物に触って感じることができるようにし、仮想現実(VR)体験にもっと深みを加えて、人間が生まれつき持っている触覚を拡張させます。VRゲームのプレイヤーがMantisを指に取り付けてプレイするところを想像してください。プレイヤーは仮想の対象物に触れて感じることができるようになり、視覚的にも物理的にも別次元の経験に没頭できるでしょう」と語っている。

Mantisは、極めてスケーラブルなシステムアーキテクチャーで、設計者が精密かつ多様な形態で、容易に利用できるフォース(力覚)フィードバックシステムを作れるようにする。理論的には、Mantisは中学生でも組み立てて使用できるという。

Mantisは、DCブラシレスモーター、カスタム電子制御装置、アドミッタンス制御スキームを使用して、安定した高品質のハプティックレンダリングを実現。DCブラシレスモータなどを使用しているため、現在、市場に出回っている同等機器の20分の1の費用で構築できるという。

研究チームは、Mantisが既存のロボットアームのハプティックにおける忠実度を再現できることを実証。さらに、デスクトップサイズアーム、広いワークスペース用アーム、ワークスペース用4本アーム、小型モバイルアーム、大型ウェアラブルアームといった5つのシステムを実行して多様な形態で使えることを実証している。

既存のロボットアームの多くは非常に重たく高価で、使用に際しては専門知識が必要となるため、一般人には遠い存在だったが、Mantisは軽量かつ手頃な価格であり一般への普及を促しそうだ。さらに、フォースフィードバックシステムをより普及させたいとの思いから、誰でもMantisを構築できるように設計図も公開されるという。

Mantisプロジェクトは、ベンチャー企業のSenmag Roboticsから支援を受けており、既に組み立てキットの製造とテストを進めている。2019年末には第1弾キットのリリースを目指している。

fabcross for エンジニアより転載)

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