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電子部品を小型化できる単原子層アンチモン——シリコン半導体を置き換える可能性も

高い電荷移動度を持つ2Dアンチモンの、エネルギーバンド構造の特徴、(左上)2Dアンチモン(左下)他の材料例

テキサス大学オースティン校の研究チームが、シリコンを代替して、より小型の半導体デバイスを実現する可能性のある新材料を見出した。第一原理計算とボルツマン輸送方程式により荷電粒子の移動度を計算し、単原子層のアンチモンが本来的に極めて高い電荷移動度を有することを発見したもので、研究成果は2019年9月25日の『American Chemical Society』誌に公開されている。

1965年、インテルの創始者Gordon Moore氏は、コンピューターチップに集積できるトランジスタの数は2年ごとに2倍になり、製造コストは半分になるとした。その後、半導体技術はこの予想通りに進歩し、これはムーアの法則として知られている。シリコンは、理想的な半導体特性と広範な適用能力により、大部分の電子デバイスに使われているが、現在では、これ以上のトランジスタを集積できないほど、チップは小型化している。つまりシリコンに関しては、ムーアの法則が終わりを迎えつつあると考えられるようになっている。

この状況を打破するため、今回研究チームは、シリコンを代替し、さらなる小型化高集積化が可能な材料として、光電気化学分野などで魅力的な特性を発揮している2D半導体に注目した。研究チームは、コンピューターで様々な2D半導体について電荷の移動度を計算し、シリコン以上に小型化高集積化が可能な材料の探索にチャレンジした。

第一原理を利用して計算される散乱率を用い、ボルツマン輸送方程式により電荷の移動度を正確に計算したところ、単原子層のアンチモンが、極めて高い固有移動度を有することが分かった。その移動度は、常温で約1330cm2V-1s-1であり、シリコンやMoS2、InSeや黒リンなどの様々な2D半導体よりも著しく高く、1eV以上のバンドギャップを持つ2D材料の中で最も高いことが判った。

単原子層のアンチモンは、高い電荷移動度を持つとともに、適度なバンドギャップを持つことから、高速で小型の半導体として、シリコン後のエレクトロニクスにおいて多くの用途に活用できると期待される。また、高移動度の2D半導体を開発するための、電子のエネルギーバンド構造に関する設計指針も得られた。研究チームは、この理論予測を実証するため、実際のアンチモン・サンプルを用いた実験を実施する予定だ。

fabcross for エンジニアより転載)

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