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ソフトロボット向けに金属系新材料を開発——耐熱環境下での活用に期待

シンガポール国立大学(NUS)の研究チームは、柔軟な折り紙ロボットの材料となる金属系新材料の製造方法を開発した。白金などの金属と燃やした紙を組み合わせることで、紙の持つ軽量性や折り畳み性を維持したまま、導電性や耐熱性なども兼ね備える。研究成果は、『Science Robotics』誌に2019年8月28日付で掲載されている。

折り紙ロボットは最先端のソフトロボットであり、ドラッグデリバリーシステムや災害時の捜索救助活動、人型ロボットアームなどへの応用が期待されている。このタイプのロボットには柔軟性が求められるため、紙やプラスチック、ゴムなど柔らかな材料で製造されることが多い。多くの場合、センサーや電子部品はロボット上部に実装するには大きすぎるという問題があった。

Chen Po-Yen助教をリーダーとする研究チームが今回開発した材料は、「graphene oxide-enabled templating synthesis」と呼ばれる新しい手法により製造する。まずテンプレートとなるパルプ紙を、酸化グラフェン溶液、続いて白金など金属イオン溶液の順に浸す。その後、不活性ガスであるアルゴン中で800℃の高温にさらしたのち、500℃の空気中で燃やす。最終的に、白金70%と灰30%から構成される厚さ90μmの金属薄層が出来上がる。この材料は、折り畳みや伸縮に十分な柔軟性を有する。

この材料で作製したロボットは、従来の材料のものより60%も軽量化できる。また電力効率が高く、30%少ないエネルギーでより速く作動する。800℃、5分間の加熱に耐えられる耐熱性を備え、寒冷環境下では電圧を送ることで材料を温め着氷によるダメージを防ぐことが可能だ。

導電性を有するため、材料自身が無線アンテナとして機能する。その結果、外付けセンサーや外部通信モジュール無しで、ひずみ検知や通信を可能にする。リアルタイムでのフィードバックや通信が可能となることで、火災や化学薬品流出現場など過酷な環境下で活用できる軽量で柔軟なロボットの製造に適している。

研究チームは次のステップとして、新機能の追加を視野に入れている。例えば、電源内蔵型ロボット実現のために、電気化学的に活性な材料を組み込んで材料自身がバッテリーとして機能する蓄電デバイスの開発だ。また製造コスト削減を目的として、銅など他の金属の利用も検討している。

fabcross for エンジニアより転載)

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