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大容量リチウムサルファ電池の製造技術を開発——リチウムイオンの4倍のエネルギー密度

現行のリチウムイオン電池の次に来る大容量電池として期待される、リチウムサルファ電池の製造技術を開発したモナシュ大学の研究チーム

オーストラリアのモナシュ大学の研究チームが、現行のリチウムイオン電池よりも、エネルギー密度が理論上4倍以上高いリチウムサルファ電池の製造技術を開発した。これまで最大の課題とされていた正極カソードの体積膨張による劣化を防止し、優れた電池性能を安定して維持、充放電サイクルを大幅に伸ばすことが期待される。研究成果が、2020年1月4日の『Science Advances』誌に公開されている。

リチウムサルファ電池は、負極にリチウム、正極にサルファを用いた充電池。サルファの理論容量は、正極として標準的に使われているコバルト酸リチウムより10倍程度高く、リチウムサルファ電池としての質量エネルギー密度は、理論上リチウムイオン電池の4倍以上とされている。

ところがサルファがリチウムを吸収する際、リチウム化に伴って約80%の体積膨張を生じ、正極に大きな応力負荷を発生する。このため正極の分解破損が進み、急激に充放電容量および充放電サイクル寿命の低下が生ずるという製品化に向けた大きな障害があった。

研究チームは、粉せっけんの製造工程で粒子の凝集を制御するために用いられる粒子架橋技術にヒントを得て、サルファ粒子間に高剛性のバインダーを適用、体積膨張およびリチウムイオン拡散のための空間を確保した。その結果、正極として充分に大量のサルファを充填しても、体積膨張を防止することに成功した。

共同研究先のドイツ・フラウンホーファー研究機構の材料・ビーム技術研究所がプロトタイプの電池を試作したところ、現行のリチウムイオン電池の電池容量(約140mAh/g)を超える1200mAh/g以上を示した。また、充放電サイクルは、200回以上でも安定した性能を示すとともに、クーロン効率も99%以上であった。

この新しい電池のコンセプトは、高性能かつ長寿命であるだけでなく、原料供給も豊富で製造コストも環境負荷も低く、リチウムイオン電池に代わる大容量電池として、実用化が期待される。研究チームは、製造プロセスに関する特許を申請済みであり、政府と産業界のパートナーから、250万ドル以上の支援を受け、工業化試験を2020年早期から開始する予定とのことだ。

fabcross for エンジニアより転載)

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