関東経済産業局、スタートアップと中小企業2組による共同プロジェクトの成果を発表
関東経済産業局は、中堅企業や中小企業とスタートアップによる合同プロジェクトの成果発表会を2020年3月6日に実施した。当日は2件のプロジェクトの発表に加え、有識者による講演が行われた。発表会は都内で開催予定だったが、新型コロナウイルスによる感染拡大を考慮し、プレス向けにオンラインで開催された。
自動車の塗装プラントや塗装機器の設計/製作/施工を行うトリニティ工業(愛知県豊田市)と、画像解析システムの研究開発を手掛けるヒューマンサポートテクノロジー(茨城県東海村)は、プラント設備で使用する画像解析システムプロジェクトを発表した。
トリニティ工業は自動車などの部品を塗装するプラント設備を手掛けているが、設備の外観検査に画像解析技術の導入を検討していた。既存の取引先や大手開発会社に相談したが、開発の難易度の高さから共同開発の同意を得られず、発注には至っていなかった。
これに対し、関東経済産業局を通じてマッチングしたのがヒューマンサポートテクノロジーだった。同社は画像解析技術を活用し、小売店の防犯カメラをリアルタイムに解析するソリューションなどを提供している。
プロジェクトでは設備外観の異常を検知できるよう、カメラの画角が異なっていても画像から異常を検知できるという。
ディープラーニングなどのAIの開発とコンサルティングを手掛けるグリアコンピューティング(東京都千代田区)は、自動車向けの防振ゴムや産業用ゴム部品の製造を手掛ける佐橋工業(愛知県小牧市)との外観検査の自動化プロジェクトを発表した。
佐橋工業は、品質向上の要求や値下げ圧力に加え、人手不足などの経営課題があるなかで、これまでに講じてきた企業努力だけでは生き残りが難しいと判断。関東経済産業局を通じてグリアコンピューティングの紹介を受けたことで2020年1月からプロジェクトを開始したという。
現在は試験段階だが、「AIに対する豊富な経験と知識を持ち、中小企業側の状況を踏まえた提案をしてくれる企業とマッチングできた。今後は自社内でもAI導入に対する知識と経験を持った人材の育成が必要」(佐橋工業)だとプロジェクトに前向きな評価をしている。
2組の発表を受けて、アオキシンテック(栃木県真岡市)代表取締役の青木圭太氏とMonozukuri Ventures(京都府京都市)代表取締役の牧野成将氏が中小企業とスタートアップの連携に対する現状をコメントした。
栃木県の大学生や高専生などを対象にしたアントレプレナーコンテストを運営するほか、地元企業や大学と連携したベンチャー支援を展開する青木氏は「スタートアップの中には製品化に向けて具体的にやるべきことやゴールが見えずに戸惑っているケースもあるので、中小企業側が寄り添ってゴールやマイルストーンを設定しながら製品化を目指すことが重要だ」と、自らの経験を基にコメントした。
一方、牧野氏は「VCとして中小企業とスタートアップのマッチングをする際に感じているのは、製造業への理解だけでなく、双方がお互いのビジネスモデルを理解することも重要だ。場合によってはハードウェアを開発しなくても、ソフトウェアなどで解決できる方法もあり、『開発してほしい』と言われたからといっても、必ずしもその通りにするのが正解ではないケースもある」とコメントした。