難燃性の炭素繊維強化プラスチックを開発——植物性由来で99%以上リサイクルが可能
2020/07/28 10:30
韓国科学技術研究所(KIST)は、2020年6月9日、植物由来のタンニン酸を使用して、難燃性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を開発したと発表した。さらに、有害物質を発生させずにリサイクルする新手法も考案したという。研究成果は『Composites Part B: Engineering』に2020年5月22日付で発表されている。
CFRPはエポキシ樹脂などのプラスチックに炭素繊維を加えた複合材料で、鋼鉄の約4分の1の重さでありながら強度は10倍もある材料だ。CFRPは、航空宇宙、自動車、造船、スポーツ用品で、既に広く利用されている。建設材料としても使用されており、CFRPには耐火性も求められる。しかし、CFRPは熱に弱く、従来、ハロゲン系難燃剤を追加する措置が取られていたが、リサイクル過程で焼却すると有毒物質が発生してしまう。そこで、無害で安全な材料を使用してCFRPに耐火性を持たせることが課題となっていた。
研究者らは、植物性由来のタンニン酸に注目。タンニン酸は炭素繊維と強く結合する特徴があり、また、燃焼して炭化すると外部からの酸素流入を遮断する役割を果たし耐火性を強化するという。実験では、タンニン酸から製造したエポキシ樹脂を炭素繊維に混合し、より強度が高く難燃性のあるCFRPの開発に成功した。
研究ではさらに新しいリサイクル方法も考案した。CFRPを臨界点以上の温度や圧力においた超臨界流体の状態で水に溶解させたところ、炭素繊維の性能を低下させずに99%以上のCFRPをリサイクル過程で回収できたという。また、エポキシ樹脂が溶解するとカーボン量子ドットと呼ばれる物質を生成することも分かった。カーボン量子ドットは、光電子工学、センサー、バイオイメージングなどの分野で材料として利用されている。
このため、エポキシ樹脂を燃やして炭素繊維だけをリサイクルする従来の手法とは異なり、複合材料を構成する全ての要素をリサイクルできるという。
(fabcross for エンジニアより転載)