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2000年前の天文計算機「アンティキティラ島の機械」の謎を解明する新たな発見

1901年、ギリシャのアンティキティラ島付近で海綿を採取していたダイバーが、ローマ時代の沈没船から古い歯車の様なものを発見した。これは「アンティキティラ島の機械」と呼ばれ、太陽や月、惑星の位置、日食や月食を予測するための、「世界初のアナログコンピューター」とも言われている。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームは、この装置の仕組みに関する新しい知見を発表した。研究結果は、2021年3月12日付けの『Scientific Reports』に掲載されている。

アンティキティラ島の機械は、青銅製の歯車が複雑に組み合わさった手動の天文計算機だ。実物は現在、アテネ国立考古学博物館に展示されている。現存するのは30個の歯車を含め、全体のわずか3分の1と考えられており、しかも82個の断片に分かれている。発見以来、多くの人々を魅了し、機械の仕組みを理解するために、いくつもの議論が重ねられてきた。

この装置は箱型で、前面に1つ、背面に2つの表示盤を配置しているとされる。2005年の調査では、3次元X線CTと表面イメージングにより、2000年近く未解読だった文字が明らかになり、背面の構造が月の動きを計算し、日食を予測するものだと発表されている。しかし、前面の構造はほとんど分かっていなかった。装置に刻まれた文字によれば、表示盤のリングの上をビーズで表した惑星が動いているという。今回研究チームは、この表示盤の再現に取り組んだ。

地球から見ると、惑星は天球上を順行したり逆行したりして見える。その複雑な惑星の動きを再現するには、長期間にわたる観測と高度な計算が必要だ。研究チームは、古代ギリシャの哲学者パルメニデスが唱えた数学的手法を使って、装置に書かれていた金星と土星の運行周期を説明できることを示した。また、フラグメントA、フラグメントDと呼ばれる2個の断片の痕跡は、金星の動きと理論的に一致すると説明している。

その後も計算を重ね、システム全体の歯車を最小限に抑えつつ、金星と土星だけでなく、太陽、月、水星、火星、木星の動きも含めた表示盤のCGモデルを作成した。筆頭著者のTony Freeth教授は「これは全ての物的証拠に適合し、装置に刻まれた科学的な文章に一致する初めてのモデルだ」とし、太陽、月そして惑星たちが表される様は、輝かしい古代ギリシャの大傑作だとしている。

「今回の成果は、アンティキティラ島の機械において古代ギリシャの宇宙観(Cosmos)がどのように構築されたかについての重要な理論的進歩だ」と、共著者のAdam Wojcik氏は語る。今後は、当時どのように装置を作ったかを検証する必要があるとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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