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放射冷却と太陽熱暖房を組み合わせたハイブリッドシステムを開発——無電源で室内を冷却し、太陽エネルギーで水を加熱

米ニューヨーク州立大学バッファロー校は、ウィスコンシン大学とサウジアラビアのアブドラ王立科学技術大学と共同で、放射冷却と太陽熱暖房を組み合わせたハイブリッドデザインのシステムを開発した。電気を使わずに室内を冷却し、太陽エネルギーを取り込んで水を加熱する実証試験に成功したという。研究成果は『Cell Reports Physical Science』にて2021年2月8日に発表されている。

放射冷却とは、熱が逃げることで温度が下がる現象。例えば日中太陽によって暖められた地表が、夜に熱を放出することで冷たくなるなど、日常生活においてなじみ深い現象でもある。

実証実験では放射冷却を用いて、直射日光下の屋外環境で温度を12°C以上低下させた。また、夜間の屋内試験では14°Cの低下に成功。さらに、冷却と同時に水を約60°Cまで加熱するのに必要な太陽エネルギーも得られた。実験に用いたパネルは70cm2のサイズで、屋根をカバーできる大きさへとスケールアップすることも容易だ。実用化も視野に入れているという。

開発されたシステムは、銀と二酸化ケイ素の薄膜層10枚を重ねた太陽分光選択ミラー(Spectrally selective mirror)を用いている。熱放射が起こると同時に、太陽光を吸収して太陽エネルギーを熱に変換する設計だ。2枚のミラーパネルの間にエミッタが設置され放射冷却を担っている。ミラーパネルは、エミッタを中心にV字型に配置。放射冷却の熱が大気方向へ効率よく反射されるようにしている。また、単一のシステム内で放射冷却と熱への変換を実現できるようにデザインした。

(C)University at Buffalo (C)University at Buffalo

従来の放射冷却システムでは、太陽光を遮断するか散乱することで加熱効果を抑制することに焦点が当てられてきた。しかしそのような方法では、冷却能力は最大でも約160W/m2(周囲温度が25°Cの場合)にしか達しないという。今回実験に用いた箱型のエミッタは、2つの表面から熱を放射できる。この構造により放射照度280W/m2を超える冷却性能を記録したと報告されている。

開発されたシステムの特徴は、吸収した太陽エネルギーを無駄にせず、太陽分光選択ミラーによって吸収すること。開発途上国で広く利用されている太陽熱温水器にも応用できる見通しだ。

研究者らは、水を沸騰させるのに十分な太陽エネルギーを取り込み、飲用に適した水を提供する方法も検討していく。なお、研究チームのメンバーがSunny Clean Waterというスピンオフカンパニーを設立し、開発した技術を商業化するためのパートナーを募集している。

fabcross for エンジニアより転載)

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