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潮流や河川の流れを利用して発電するマンタ型水中カイトシステム——米ARPA-Eから資金約420万ドルを獲得

Image: SRI

SRIインターナショナルは、2021年3月18日、米国エネルギー省のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)から、「Submarine Hydrokinetic And Riverine Kilo-megawatt Systems(SHARKS)」プログラムの一環として、3年間で約420万ドル(約4億6000万円)の資金提供を受けることを発表した。SHARKSプログラムは、潮の干満や河川の流れなど水流の力から電気を生成しコスト競争力のあるハイドロキネティックタービン(HKT)の開発を支援するものだ。

今回、資金提供の対象となったプロジェクトは、環境に優しく、信頼性と費用効果が高い潮力発電をする水中カイト(西洋たこ)型システム「Manta」だ。風によって持ち上げられ空を飛ぶカイトと同様に、Mantaは水中用カイトを用いて潮の満ち引きや河川の流れなど水流の力を捉えて発電する。このシステムの名称は、マンタ(オニイトマキエイ)の水中での優雅な動きにちなんで付けられた。

Mantaの電力変換システムはシンプルで、カイトを繰り出したりリールで巻き入れたりするポンプ作用に基づいている。カイトが繰り出されると、潮流から電気を生成する発電機が回転する。この発電機がモーターとして機能し、カイトを発電機に向けたときに、わずかな力でカイトを巻き取る。

カイトの動きを電流に変換する「発電機」といえる動力取出装置(PTO)には、SRIによる新設計のトランスミッションシステムがカイトのテザーに組み込まれている。このトランスミッションシステムにより構造の小型化が可能になり、カイトの動きによる引く力を回転式発電機に効率的に直結させている。SRIの斬新な設計により、ギア比を高くしなくても発電機は高速で回転できるため、システムのコストが低くなる。その結果、Mantaはよりシンプルで、より小型かつ効率的となる。

カイトの動きは、季節ごとや突然の流れの変化、人間や野生生物の活動、土砂の流送に対して簡単に調節できる。例えば、嵐や大型船の通過、野生動物の移動などの際には、小型ポンプでカイトを沈めることができる。回転ローターとは異なり、カイトは海の生き物に及ぼす脅威が少ない。

Mantaの利点は最小限の構造と設置コストで発電できることで、発電にかかる平均コストは回転式タービンの4分の1以下を達成している。そのため、Mantaは送電網から離れた場所でも配置できる。アラスカの田舎などの遠隔地での使用に理想的で、遠方の電力網ネットワーク利用費用や、重大な汚染を引き起こすディーゼル発電機の使用費用をなくすことができる。しかし、Mantaには拡張性もあり、遠隔地のマイクログリッドと大規模なシステムの両方に対応する。

SRIはカリフォルニア大学バークレー校と共同で、今回獲得した資金を使って、Mantaの概念を改良し実証する予定で、このテクノロジーを商用利用できるようにすることを目標としている。

fabcross for エンジニアより転載)

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