グラフェンと異なる、新たな2Dカーボン構造を発見
2021/07/27 07:00
ドイツのマールブルク大学とフィンランドのアールト大学の共同研究チームが、厚さがグラフェンと同様に1原子サイズであり、正方形と六角形、八角形のカーボン環から構成される新しいカーボン2Dネットワーク構造を発見した。高分解能走査型プローブ顕微鏡を用いて解析した結果、ネットワークの独特な構造を確認するとともに、電子特性がグラフェンとは異なり、金属的な性質を持つことを見出した。将来のカーボンベースの電子デバイスにおける導電ワイヤーや、リチウムイオン電池の大容量陽極材料などに、画期的な応用が期待される。研究成果が、2021年5月21日の『Science』誌に論文公開されている。
カーボンには、多様な型式の同素体が存在する。ダイヤモンドやグラファイトに加えて、最も薄い2D材料として知られる1原子層厚さの2Dグラフェンもその1つであり、将来的なエレクトロニクスおよびハイテク技術において革新的な応用が期待されている。グラフェンでは各カーボン原子が3つの隣接原子と結合することにより、六角形のカーボン環を構成してハニカムネットワーク状に配列している。理論的にはグラフェン以外にも、他の2D平面ネットワークの配列パターンが存在することが予測されているが、これまでに実際に実験的に実証された例はない。
マールブルク大学とアールト大学の共同研究チームは、六角形のカーボン環だけでなく、正方形と六角形、八角形のカーボン環が組み合わさった2Dネットワーク「ビフェニレンネットワーク」を合成することに成功した。共重合体脱フッ化水素反応により、ハロゲン化テルフェニル分子から六角形カーボン環のチェーンを滑らかな金表面上で形成し、次にこれらのチェーンを結合する際に、正方形と八角形のカーボン環が形成されるように結合することによりビフェニレンネットワークを創成した。最初の六角形チェーンには、右手と左手のような2つの鏡像異性体が存在するが、同じ鏡像異性体のみがビフェニレンネットワークを形成するので、前駆体の調整が重要であることも明らかになった。
研究チームは、高分解能走査型プローブ顕微鏡を用いて、ネットワークの独特な構造を確認するとともに、その電子特性がグラフェンと異なる金属的性質を持つことを見出した。たった21原子幅のナノサイズ2Dストライプでも、グラフェンが半導体特性を示すのと異なり金属のように挙動するので、「将来のカーボンベースの電子デバイスにおける導電ワイヤーとして活用できる」と、研究チームは語る。更に、「リチウムイオン電池において、現行のグラフェンベースの材料と比較しリチウム貯蔵容量が大きくなるので、大容量陽極材料を開発できる」と説明する。現在、研究チームは、応用の可能性を更に拡大できるように、より大きな2Dシート材料を作製する研究を行っている。また、「この新しい合成方法は、新しい2Dネットワークパターンの発見にも利用できる」と、期待している。
(fabcross for エンジニアより転載)