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産業分野の排出CO2からメタンを作る——効率の高いCO2回収法を開発

アメリカのパシフィックノースウエスト国立研究所(PNNL)の研究チームが、産業分野で排出されるCO2を効率良く回収し、天然ガスの主成分で環境負荷の小さいエネルギー源となるメタンに、低コスト/高効率で変換する方法を開発した。従来よりもCO2を効率良く吸収するとともに、メタン変換の触媒性能に優れる新しい吸収液を活用したもので、CO2回収およびH2との反応によるメタン変換を統合したプロセスを実現する。CO2とH2からメタンを合成する従来法に比べて、熱効率を5%向上し、初期投資を32%、製品価格を12%低減できると期待されている。研究成果が、2021年8月21日に『ChemSusChem』誌に論文公開されている。

温室効果ガスの削減に向けて、様々な取組みが世界規模で行われている。産業分野では火力発電所や製鉄所、精油所などから大量に排出されるCO2を回収した後、固定化して地中深くに貯蔵したり、有益な化学物質に変換して再利用したりする方法も研究されている。その中で、排出CO2を吸収液により回収分離し、H2との反応によりメタンに改質して、環境負荷の小さいエネルギーとして再利用する方法が、経済性に優れ大規模化も容易な方法として検討されている。

CO2とH2からメタンを製造する方法は、H2とCO2を高温高圧状態に置き、ニッケルを触媒としてメタンと水を生成するサバティエ反応などが古くから知られている。ただし、そのほとんどが高温プロセスを必要とし、商業化するにはコスト高という問題がある。そこで、産業プロセスで排出されるガスからCO2を回収して原料化する効率的で低コストのメタン変換方法が実現すれば、環境保護および経済性を両立する新しいエネルギー技術に発展できる可能性を持つ。

これまで排出CO2の吸収液としては、水性モノエタノールアミン(MEA)などのアミン系水溶液が用いられてきたが、水分量が高くメタン変換に大きなエネルギーが必要などの問題があった。PNNLの研究チームはこれまでに、吸収液として水分量の少ないN-(2-エトキシエチル)-3-モルホリノプロパン-1-アミン(EEMPA)を採用することで、吸収性がMEAより高く、排出CO2の95%以上を回収でき、発電所におけるCO2回収コストを従来よりも19%低減できることを示した。

そして今回、ルテニウム触媒を用いることでメタン変換に必要なエネルギー量を削減し、低温低圧の比較的マイルドな反応条件で、回収したCO2の90%以上をメタンに変換できることを明らかにした。CO2排出サイトにおけるシンプルな反応容器で製造が可能であり、従来法と比較したとき初期投資は32%、操業および維持コストは35%低くでき、燃料としての販売価格は12%低くなることがわかった。

「天然ガスは、環境負荷の比較的小さいエネルギー源として今後とも需要は増加する。排出CO2と再生可能なH2を用いて、低コスト高効率で製造できるメタンは、環境保護と価格競争力を両立する代替エネルギー源として有望だ」と、研究チームは期待する。開発プロセスにより、メタン以外のメタノールなどの有益な化学物質に改質する検討も進めている。

fabcross for エンジニアより転載)

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