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木材由来の新材料で、リチウムイオン電池の出力/安全性を向上 米ブラウン大学など

高出力で、より安全な固体材料を用いたリチウムイオン電池の研究が進められている。米ブラウン大学とメリーランド大学の共同研究チームは、「木」というこれまでにない材料から固体電池の材料を開発した。この研究成果は2021年10月20日付の『Nature』誌に掲載されている。

リチウムイオン電池における電解質の役割は、電池の正極と負極の間にリチウムイオンを伝導することだ。現在は液体電解質が用いられているが、可燃性があり有毒な化学物質を使用しているため、固体電解質による電池が求められている。

これまで開発されたほとんどの固体電解質はセラミック材料であり、イオン導電性は非常に高いものの、厚く硬く脆いという特性がある。電池の充放電や製造時のストレスで材料の亀裂や破損につながる恐れがある。

そこで両大学の研究チームは、木材由来の超極細繊維であるセルロースナノファイバーと、銅を結合した固体イオン導電体を開発した。紙のように薄く柔軟性がある材料で、これまでの固体高分子電解質より10~100倍高いイオン導電率を示した。セラミックとほぼ同じ導電率だという。リチウム電池の電解質としても、全固体電池の正極におけるイオン導電バインダーとしても利用できる可能性がある。

開発した材料がなぜイオンをよく通すことができるかを解明するために、銅-セルロース材料のミクロ構造を計算機でシミュレーションした。モデリングの結果、通常は緊密なバンドル状になっているセルロース高分子鎖の間のスペースを、銅が増大させることが分かった。拡大したスペースは、比較的抵抗無くリチウムイオンをよく通す分子チャネルとなっていた。

イオン導電率の高い固体電解質材料を、固体電池の正極用バインダーとして用いることにより、負極と同程度に正極を厚くすることが可能になるという。

研究の意義について「自然由来の材料を用いることで、環境に対する電池製造の負荷を低減することになる」とブラウン大学のYue Qi教授は語っている。

研究チームは、この新しい電解質材料が、固体電池技術の商用量産化へ向けた第一歩になることを期待している。

fabcross for エンジニアより転載)

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