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工業廃棄物からレアアースを抽出する手法を開発——従来比2倍以上の歩留まりを達成

石炭燃焼廃棄物フライアッシュに存在する微細な球状酸化物には、レアアース元素が含まれている。急速ジュール加熱プロセスにより、これらの元素を高歩留りで抽出回収してリサイクルできることが示された。/Courtesy of the Tour Group

アメリカのライス大学の研究チームが、フライアッシュやボーキサイト残留物、廃棄電子機器等の廃棄物から、貴重なレアアース元素を高歩留りで抽出することに成功した。急速ジュール加熱を用いるもので、従来の工業的抽出法に比べて必要なエネルギーが少なく、また環境に有害な廃水を排出しないことから、重要な戦略物資であるレアアース元素を低コストでリサイクルする手法として期待される。研究成果が、2022年2月9日の『Science Advances』誌に公開されている。

スマートフォンやパソコン、EV等多くの工業製品において、レアアース金属元素(REE)を用いた電子/磁気デバイスが使われている。小型モーターや希土類磁石にはネオジウムやジスプロシウム、HDDガラス基板等の研磨剤や自動車用排ガス触媒にはセリウムやランタン、光ファイバーにはエルビウム等が使用されている。これらのREEは産出量が少なく、中国が生産量の半分以上を占めるなど、重要な戦略物資になっている。

一方で、廃棄された電子機器を「都市鉱山」として、リサイクルを推進する動きがある。また石炭火力発電所の副産物であるフライアッシュ、およびアルミニウム製造の副産物であるボーキサイト残留物の中にREEが多く蓄積されているため、これら廃棄物からREEを抽出して回収することが重要な課題になっている。

ところが従来の工業的抽出法は、強酸によるリーチング(溶液中への溶解)が必要で、時間がかかるうえに強酸性廃水の処理が必要で、環境負荷のかかる高コストのプロセスになっている。さらにフライアッシュでは、REEの周りにシリコン、アルミニウム、鉄等の酸化物ガラスが形成されており、これの溶解に15モル濃度の強硝酸によるリーチングが行われている。

研究チームは「急速ジュール加熱プロセス(FJH:flash Joule heating)」を利用して、これまでに石炭やコークス等から2Dグラフェンを創成する研究を進めており、FJHを利用して廃棄物からREEを抽出回収することにチャレンジした。フライアッシュに導電性を高めるカーボンブラックを加えて、FJHにより1秒間で約3000℃に加熱した結果、ガラス相が破壊され廃棄物は可溶性の高い「活性化されたREE種」に転換され、0.1モル濃度の弱塩酸によるリーチングでも2倍以上の高歩留りでREEを抽出することができた。必要な電力は600kWh/tonで、非常にエネルギー効率が高いこともわかった。

「この手法は普遍性が高く、ボーキサイト残留物や廃棄電子機器についても同様の効果が得られる。これらの廃棄物は毎年数百万トン規模で排出されるので、FJHを適用すれば、多量のREEを低コストかつ高効率で抽出回収できる。もはや環境に有害な採掘やプロセス、更には外国の供給源に頼る必要がなくなる」と、研究チームは期待する。

fabcross for エンジニアより転載)

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