動物の生態をモニターする3Dプリント製電子首輪「E-Collar」——軽量化と製造コスト削減を実現
2022/04/03 07:00
スペインのサラゴサ大学とデータコンサルティング会社であるGeoSpatium Lab、米カリフォルニア大学サンディエゴ校比較認知研究所(CCL)の合同研究チームが、発信機を内蔵し動物の生態をモニターする3Dプリント製の電子首輪「E-Collar」を発表した。この研究結果の詳細は、2021年12月31日付でオンラインジャーナル『Sensors』に掲載された。
1960年代以降、多くの農家が飼育している動物の行動を把握するためにテレメトリー技術を導入するようになり、最近ではデータ取得能力が高い最新のGPSシステムも採用され始めている。特に、加速度センサー、圧力センサー、カメラなどをGPS首輪に組み込むことで、大型ほ乳類の移動や採食行動、生息地などを追跡できると期待が高まっている。
しかし、従来品の多くは、柔軟性がない上に重量バランスが悪く、製造コストも高いという問題を抱えている。同チームはE-Collarにモジュール方式を採用し、各モジュールを3Dプリンターで製造することでこの問題を克服した。従来品に比べて重さは約3分の1、厚さは半分となり、製造コストも大幅に削減された。
電池モジュール4個とセンサーなどの電子部品を内蔵するモジュール3個、計7個のモジュールから成る試作機で、動物に装着した際のバランスを実際に検証したところ、首輪の重量が均等に分散し、動物が快適に過ごせることが分かった。
また、E-Collarを構成するモジュール式電子部品の大きさは20×30mmで統一されており、小型動物も大型のほ乳類もトラッキング可能で、本体の内側はある程度の湾曲を持たせて設計してあり、動物の首周りに合わせてカスタマイズも可能だ。
これらの検証により、同チームは、首輪を装着する「動物を中心に考えた設計」をすることで「首輪を装着した動物の行動に影響を与えることなく、正確で信頼性の高いデータを収集できる」としており、本研究成果は「動物モニタリングに関する知見に貢献するため、テレメトリー機器の設計者やメーカー、技術者、動物および農場分野の専門家にとって興味深いものである」と結論づけている。
3Dプリンターを利用することで手頃な価格で製造可能となったE-collarは、将来的に農業革新の起爆剤となるかもしれない。
(fabcross for エンジニアより転載)