風力発電のタービンブレードを橋梁に再利用——役目を終えた設備に新たな存在意義を
2022/04/24 07:00
アイルランドのマンスター工科大学とコーク大学のチームが率いるプロジェクト「Re-Wind Network」は2022年1月26日、風力発電施設のタービンブレードを再利用して組み立てた橋「BladeBridge」を設置したと発表した。
再生可能エネルギーや循環型経済に関心を持つ人は多い。しかし本当の意味でこれらの課題を達成するためには、役目を終えた設備をどう廃棄するかといったライフサイクル全体に目を向ける必要がある。
この課題は風力発電の状況にもあてはまる。中でも風を捉えるブレードはGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)複合材などの最先端の技術で製造される一方、非生物分解性などを理由に廃棄が難しい部材の1つだ。ブレードを廃棄する手段は埋め立て、焼却、保管などがあるが、限界が見えている。
アイルランドでは2038年までに約2300基の風力発電タービンの廃棄が予想されているが、このプロジェクトはその流れを変える可能性がある。その手段とは「Greenways」と呼ばれる遊歩道で、ブレードを利用した橋をBladeBridgeとして再利用するものだ。Greenwaysは用途の終わった交通インフラの跡地を自転車や歩行者向けの遊歩道として整備するアイルランドのプロジェクトである。
このアイデアはブレードの再利用先を提案する50件以上の候補を絞り込んだ結果で、それぞれを技術、地理、社会、環境、経済の観点から評価した。評価ツールには、例えばアイルランド全土で稼働中のブレードのデータ、3次元 LiDARでスキャンしたブレードの形状データ、構造解析と試験手順、ライフサイクル分析などが含まれる。
アイルランドのGreenwaysは2022年までに240 kmが整備される予定で、さらに800 kmの追加整備が提案されている。そこに設置するBladeBridgeの部材となるブレードは、当面は供給に困ることはないだろう。
(fabcross for エンジニアより転載)