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一酸化炭素を多く含む気体から水素を精製する新手法——水素の回収率で新記録

Credit: Kelby Hochreither/Penn State. All Rights Reserved.

高温のプロトン選択性高分子(ポリマー)電解質膜(PEM)を用いて気体から水素を分離する新手法が提案された。この研究は米ペンシルベニア州立大学が率いた研究チームによるもので、2022年3月11日付で『ACS Energy Letters』に掲載された。

金属精錬、肥料製造、大型車両向け燃料電池への動力供給は、いずれも精製された水素が必要なプロセスだ。しかし、水素以外の気体を含む混合ガスから水素を精製あるいは分離するには、いくつかの段階を経る必要があり困難な場合がある。

従来の水素分離法では水性ガスシフト反応器を用いているが、余分な工程が含まれていた。水性ガスシフト反応器を使う場合、まず一酸化炭素が二酸化炭素に変換され、変換された二酸化炭素は吸収プロセスを経由し水素が分離される。そして、精製された水素はコンプレッサーで加圧され、すぐに使用したり貯蔵したりする。

それに対し、今回、研究チームは新たに開発した電解質膜や材料を装着したポンプを使用することで、従来のプロセスを簡略化できることを実証した。高温PEMなどの新材料を搭載した新しい電気化学ポンプは、混合ガスから水素を分離すると同時に圧縮するため、従来の手法よりも効率的だ。

鍵となるのは、高温のPEMを使うという点だ。これにより二酸化炭素や一酸化炭素などの気体分子から素早く、かつコスト面でも効率よく水素を分離できる。また、他の高温PEM型電気化学ポンプよりも20〜70℃高い200〜250℃で動作可能であるため、水素を不要なガスから分離する能力が向上している。

このPEMはプロトンを通過させる一方で、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、窒素といった、より大きな分子の通過は妨げることで機能する。また、研究チームは、電極が水素ポンプの中で効果的に機能するように、電極の粒子をつなぎ留める接着剤として働く特殊なホスホン酸アイオノマーバインダーを合成。これを用いて、正電荷の電極と負電荷の電極がいわばサンドイッチの「パン」のような役割をし、膜が「具材」となる「サンドイッチ」を作った。

ポンプ内では、正の電荷を帯びた電極が、水素をプロトン2個と電子2個に分解する。プロトンは膜を通り抜けて正電荷の電極から負電荷の電極へ移動する一方、電子は膜を通過せずに正電荷の電極に接触しているワイヤーを経由して負電荷の電極へ移動する。その後、陽子は負電荷の電極で電子と再結合し、水素を再び形成する。

この新しい電気化学水素ポンプを用いたところ、合成ガスとして知られる燃料ガス混合物からの水素回収率は85%、従来の水性ガスシフト反応器の出口流からの回収率は98.8%という最高値を記録した。

この新手法は、特に一酸化炭素を多く含む場合の水素精製に効果的で、コスト削減につながる可能性がある。一酸化炭素を3%以上含むガスを供給して、電気化学水素ポンプでこれほど水素を精製したのは初めてのことだ。研究チームは、一酸化炭素を最大40%含む混合ガスでも水素精製に成功した。

水素はパイプラインを劣化させるため、パイプライン内には5%以下の低濃度で貯蔵する必要があるが、実際に使用する際には99%以上の純水素が必要になるという課題がある。研究チームは、水素を既存の天然ガスパイプラインで貯蔵する際に、この新手法とツールが水素精製にどう役立つかを調べる予定だ。

fabcross for エンジニアより転載)

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