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NASA、スーパーアロイよりも1000倍強い耐熱合金を開発

3Dプリンティング技術により、約1100℃の高温負荷条件において既存の最先端スーパーアロイよりも、1000倍以上も高い耐久性を有する耐熱合金が開発された。タービンエンジン燃焼器の製造例を示す。/Credits: NASA

NASAグレン研究センターが、約1100℃の高温負荷条件において、既存の最先端スーパーアロイよりも1000倍以上も高い耐久性を有する耐熱合金「GRX-810」を開発した。独自の熱力学的合金設計モデルを駆使して最適基本成分系を設計するとともに、3Dプリンティングによってナノスケールの酸化物を均一分散させ、高温においても微細組織や高密度転位構造を維持することで、極めて優れた高温強度と破断延性、高温クリープ特性を実現した。宇宙航空用ロケットエンジンのノズルやドームなどに用いることで、高性能化、消費燃料や運用維持コストの削減をもたらすと期待される。開発合金および製造プロセスは、YouTubeで公開されている。

航空機やロケットエンジンの燃焼室用部材は1000℃以上の超高温に曝されるため、現状ニッケル基などのスーパーアロイが使用されている。運転温度が高いほどロケットの燃焼効率が高くなることから、常に高温強度や高温クリープ特性の高い材料が必要とされ、これを実現する製造方法としてメカニカルアロイングや単結晶部品製造技術などが追求されている。

ナノスケール酸化物を均一分散させた酸化物分散合金(ODS)は、微細酸化物によって高温における結晶粒成長と転位運動をピンニング効果によって抑制し、高温域の機械的性質を向上している。製造には粉末メカニカルアロイングなどが用いられるが、均質な材質を得るためには時間もコストもかかるという問題があった。

NASAの研究チームは、ODSの製造に3Dプリンティング積層造形技術を活用することにチャレンジした。ベース合金となるNi-Co-Cr系粉末表面にナノスケール微細酸化物Y2O3粉末がコーティングされた混合粉末体を得て、これをレーザービームにより積層的に溶融結合させることによって、Y2O3が均一に微細分散したODS部材を効率的に製造することに成功した。

ベース合金としては、高エントロピー合金として研究が進んでいる多種主要元素合金(MPEA)に注目し、コンピューターによる独自の熱力学的合金設計モデルを用いて設計した中エントロピー型Ni-Co-Cr系を採用した。その結果、複数の転位構造が存在して転位運動の多様な経路が出現するMPEAの特長として、高強度と高延性を同時に向上させることができた。

こうして得られたY2O3分散Ni-Co-Cr系ODS合金は、1093℃において従来の最先端スーパーアロイと比較し、2倍の強度、3.5倍の破断延性、1000倍以上のクリープ特性を示すことがわかった。「3DプリンティングによるODS製造および熱力学的合金設計モデルによるMPEA設計は、高温耐久性の向上により燃焼効率向上や部材軽量化を可能とし、NASAが追求する次世代航空宇宙技術に対して重要な役割を果たす画期的なブレークスルー技術だ」と、研究チームは期待する。

fabcross for エンジニアより転載)

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