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放射線遮蔽ガラスの鉛フリー化に取り組む——カドミウム酸化物で遮蔽能力を高める

Oleg Tashlykov准教授が指導する研究チームは、環境に優しい放射線遮蔽ガラスの創成に取組んでいる。/Photo: Anastasia Farafontova

ロシアのウラル連邦大学(UrFU)の研究チームが、鉛フリーの放射線遮蔽ガラスの開発を目的として、さまざまな重金属酸化物を添加したホウ酸塩ガラスの研究を行っている。カドミウム酸化物を加えた結果、放射線遮蔽特性向上に有効な密度が著しく増加し、ガンマ線やX線の通過を減衰する能力が向上することを見出した。鉛汚染の危険性を持つ鉛ガラスに代わる、環境に優しい放射線遮蔽ガラスとして期待される。実験内容および研究成果が、Progress in Nuclear Energy誌の4月号に公開されている。

放射線遮蔽ガラスは、X線撮影やX線CT検査を行う病院から放射性同位元素を扱う研究室まで、いろいろな場所で用いられている。放射線から人体を防護して、必要な装置を制御し遠隔操作できるように、優れた放射線減衰特性や、長期間に渡る透明性の維持、取り扱う上での軽量化、製造コスト効率などの点で、鉛ガラスが主として用いられている。だが、鉛含有量の高い鉛ガラスは長期間使用する過程で鉛が放出され、人や建物など周囲に鉛汚染の問題を起こす。特に人体に蓄積することで、脳、肝臓、腎臓、骨組織などに悪影響をもたらすことから、鉛フリーの放射線遮蔽ガラスの開発が課題になっている。これまでストロンチウム、バリウムなどを使用した鉛フリーガラスが開発されているが、放射線遮蔽能力が低く、比較的放射線が弱いマンモグラフィ検査などに使われるに止まっている。

UrFUの研究チームは、鉛フリーの放射線遮蔽ガラスの開発に向けて、ホウ酸塩ガラスに着目した。ホウ素は、熱中性子に対する吸収断面積の大きな元素の1つとして知られており、ホウ酸塩ガラスは、シンチレーション検出器や中性子吸収ガラス用途に用いられている。だが、放射線遮蔽特性向上に最も重要な因子の1つである密度が低く、必ずしも充分な遮蔽能力が得られてない。

研究チームは、ガラスの基本成分にいろいろな重金属酸化物を添加することにより、透明性を損なうことなく物質の密度を増加させて放射線遮蔽効果を高めることにチャレンジした。その結果、ホウ酸塩ガラスの基本成分にカドミウム酸化物を加えると、ガラスの密度が著しく増加し、ガンマ線やX線の通過を減衰する能力が向上することを見出した。中~低エネルギーのガンマ線の領域における放射線遮蔽ガラスとして有望であると考え、妥当性の検証のため、さまざまな放射線の飛程に関するモンテカルロシミュレーションを実施した。

その結果、セシウム137およびコバルト60同位元素から発生するガンマ線に関して、実験データと良く一致する優れた減衰係数を確認した。研究チームは、更に、バリウムや亜鉛、タングステンなどの酸化物を添加したガラス成分系を探索し、優れた遮蔽特性、高度の長期透明性、軽量性、製造面のコスト効率を有する最適成分ガラス材料を追求する予定だ。

fabcross for エンジニアより転載)

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