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高層ビルが丸ごとバッテリーになる——エレベーターを利用した重力蓄電システムを発表

オーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA)は、高層ビルのエレベーターを利用した重力蓄電システム「Lift Energy Storage Technology(LEST)」を発表した。重りを持ち上げて、電気エネルギーを位置エネルギーに変換して蓄える技術だ。研究結果は、2022年3月29日付けで『Energy』にオンライン公開されている。

太陽光や風力、その他の再生可能エネルギーを利用した発電技術は、ここ数年で急激に増加している。2026年までに2020年比で60%以上増加する見込みで、その半分以上は太陽光発電が担うという。低炭素もしくは脱炭素社会への移行には、電力の需給バランスをとる必要があり、従来とは異なる革新的な蓄電システムが求められている。

世界には1800万基以上のエレベーターがあるが、動いていない時間も多い。LESTは、そうしたエレベーターの空き時間を利用して、エネルギーを保存したり放出したりできるシステムだ。筆頭著者のJulian Hunt氏は、「最近マンションの14階に引っ越して、何度もエレベーターで昇り降りしているうちに、LESTを思い付いた」という。

LESTの原理自体は、揚水発電システムと変わらない。重いコンテナを下層階から上層階に持ち上げることで、エネルギーを位置エネルギーとして保存し、上層階から下層階に下ろすときにエレベーターに既に備わっている回生ブレーキを利用して発電できる。

既存の設備を利用可能で、装置を追加したり新たにスペースを設ける必要がないため、低コストで電力網やビルのオーナーに付加価値を与えることができる。コンテナは空き室や廊下に保管し、積み下ろし時に人との接触を防ぐため、センサー内蔵の自律型トレーラーを利用するという。蓄電コストは、ビルの高さにもよるが、1kWhあたり21~128ドル(約2800~1万7000円)と見積もっている。

このように、手頃な価格で分散型の補助的な電力サービスを提供できることから、都市の電力品質を改善できると研究チームは提案している。ニューヨークや上海、東京、ドバイなど、高層ビルが立ち並び、電力消費量が多い大都市圏にLESTを展開すれば、約30~300GWhのエネルギー貯蔵が可能だと見込んでいる。

「LESTのように環境に優しく柔軟な貯蔵技術は、多くの電力を再生可能エネルギーから得る将来、社会にとってますます有益になるだろう。分散型の貯蔵リソースを組織的に利用することで、大規模な中央貯蔵システムへの投資の必要性も緩和される」と、共同研究者のBehnam Zakeri氏は語っている。

fabcross for エンジニアより転載)

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