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応力テンソルを制御した低コストで高精度な光学部品の形成技術を開発 MIT

Credits:Image: Youwei Yao

宇宙望遠鏡やX線ミラー、ディスプレイパネルなどの軽量で高精度な光学系の技術は、過去数十年で大きく発展した。しかし、微細構造を持つミラーやプレートの表面は、応力を受けたコーティング材によってひずみ、光学性能を劣化させることがあり、微細加工技術の課題となっている。

MITカブリ天体物理学・宇宙研究機構のスペースナノテクノロジー研究所が、この課題を克服した新しいプレート材の再形成法を考案した。

4月20日、「Optica」誌に掲載された論文で研究チームは、ひずませることなく、精密かつ複雑な形状に曲げることができる方法について説明した。同技術は、精密で容易に変形でき、かつ安価な光学部品を作製可能にし、ARヘッドセットや低コストで打ち上げられる大型宇宙望遠鏡などの広い用途で役立つと期待されている。

スペースナノテクノロジー研究所は2017年以来、NASAゴダード宇宙飛行センターと協力し、コーティング材の応力により生じるX線望遠鏡ミラーのひずみを補正する方法を開発してきた。同技術を一般的な用途に応用するため、さらなる研究を進めた結果、応力テンソルメソ構造を発明した。

応力テンソルメソ構造は、薄い基板の裏面に配列した準周期性の格子から成り、各格子内にあるグレーティングの向きと面積を変化させたパターン形成で、応力テンソル場の3成分すべてを制御可能にする。

研究チームは応力を精密に制御するための新しい応力パターンの配列を考案した。光学基板の裏面にまず二酸化ケイ素などの材料でできた高い応力の薄膜をコーティングする。コーティングした膜に考案した応力パターンをリソグラフィーで印刷し、特定部分の材料特性を変化させる。部分的にコーティング処理をすることで、表面にかかる応力や張力を制御できる。光学面とコーティングは接着されているため、コーティング材を調整することで光学面の形状も変化させることが可能だ。

研究チームは、将来的に応力テンソルを動的に制御することも想定している。薄い圧電作動板に応力テンソルメソ構造をパターン化できれば、本技術は光学の枠を超えて、マイクロエレクトロニクス上のアクチュエータやソフトロボットなどへの応用が期待できるという。

fabcross for エンジニアより転載)

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