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従来よりも強度と延性を強化——金属3Dプリンターでハイエントロピー合金を製造

マサチューセッツ大学アマースト校とジョージア工科大学は、金属3Dプリンターを用いて、高い強度と延性を兼ね備えたハイエントロピー合金を開発した。ナノスケールの微細構造は優れた機械特性を発揮し、航空宇宙、医療、エネルギー、輸送分野への展開が見込まれる。研究結果は、2022年8月3日付の『Nature』に掲載されている。

ハイエントロピー合金とは、5種類以上の構成元素をほぼ同程度含む合金のことだ。主要元素に微量元素を加えた従来の合金にはない特性を示すことから、材料科学の新しいパラダイムとして、この15年で大きく注目を集めている。

研究チームは、新しい特性を備えたハイエントロピー合金を開発するために、大きな温度勾配と冷却速度を特徴とする、レーザー粉末床溶融結合法(L-PBF)による金属3Dプリントを利用することにした。L-PBFでは、従来の冶金(やきん)法よりも迅速に材料を溶かしたり固めたりできるので、材料に「平衡からほど遠い、まったく異なる微細構造が生じる」と、マサチューセッツ大学のWen Chen助教は語る。

研究チームが3DプリントしたAlCoCrFeNi系ハイエントロピー合金の微細構造は、面心立方(FCC)ナノラメラ構造と体心立方(BCC)ナノラメラ構造の層が交互に重なり、その2相ナノラメラはランダムに配向したマイクロスケールの微小の共晶コロニーに組み込まれている。

この特殊な構造により、合金は約1.3GPaの降伏強度と約14%の均一な伸びを示した。通常の鋳造加工と比べて「強度は約3倍で、延性は失われないどころか、そろって増加した」とChen氏は説明する。通常、丈夫な材料は壊れやすいことから、この結果は「独創的で、材料科学や材料工学において刺激的だ」と、Chen助教は評価している。

FCCおよびBCCナノラメラ構造が果たす役割を理解するため、ジョージア工科大学は、2相結晶塑性計算モデルを開発した。「我々のシミュレーションでは、驚くほど高い強度、高い硬化反応がBCCナノラメラに見られた。これは、優れた強度と延性の相乗効果を合金に持たせるために極めて重要だ。メカニズムの理解は、並外れた機械特性を備えた3Dプリント製ハイエントロピー合金を開発する道しるべとなる」と、ジョージア工科大学のTing Zhu教授は語る。

将来的には、設計自由度の高いハイエントロピー合金と、複雑な部品を作れる3Dプリント技術を活用することで、生物医学または航空宇宙向け部品を直接生産することも十分可能だ。

fabcross for エンジニアより転載)

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