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燃料電池の経年劣化を回復させるだけでなく、初期性能をも向上させる単純な方法

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、再生可能エネルギー利用への鍵となる技術である燃料電池や電解セルの寿命を延ばすのに、システムのpHを変えるという単純な方法が有効であることを発見した。

同研究成果は2022年8月11日、「Energy & Environmental Science」誌に掲載された。

固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、高温の固体電解質を用いて燃料から電気エネルギーに変換する。現在知られている燃料電池では最も高温(通常700~1000℃)で稼働し、最も発電効率が高い(45~65%)。一方、固体酸化物形電解セル(SOEC)は、水を電気分解して水素などの貯蔵できる形の燃料にする。

SOFCやSOECは、多数のセルを積み重ねたもので、金属が酸化しないようにクロム元素を含む鋼鉄製の金属配線で接続されている。しかし、電池稼働時で高温になると、クロムの一部が蒸発して正極と電解質の界面に移動し、酸素の取り込み反応を阻害し、ある時点から、電池効率はそれ以上運転する価値がないほど低下する。

「つまり、酸素取り込みの阻害過程を遅らせるか、理想的には逆転させることによって、SOFC/SOECの寿命を延ばすことができ、実用化に向けて大きく前進します」とMITのHarry Tuller教授は述べた。

そこで、研究チームは、表面の相対的な酸性度を塩基性へと変化させる酸化リチウムでSOFC/SOECの正極をコーティングした。少量のリチウムを加えると、クロムにより被毒した電池を初期性能まで回復させることができた。さらにリチウムを追加すると、性能は初期値をはるかに超えて向上した。「重要な酸素還元反応速度に3~4桁の向上が見られ、この改善効果は、酸素の取り込み反応を促進するために必要な電子を電極表面に放出したためと考えられます」とHarry Tuller教授は説明した。

さらに、研究チームは、MITの最先端の透過型電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法を用いて、同材料をナノスケールで観察し、酸化リチウムがクロムを効率よく溶解してガラス状物質を形成し、正極の性能を劣化させないことを見いだした。

同研究は、ガスセンサーや触媒、酸素透過型リアクターなどの固体酸化物で、酸素交換反応が中心的役割を果たす技術に、応用可能とのことである。研究チームは現在、シリカなどによる被毒への酸性度の効果も調査している。

fabcross for エンジニアより転載)

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