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磁場を動力源とした、体内で分解する医療用ミリロボット

American Chemical Society/YouTube

香港大学の研究チームが、磁場を動力源として遠隔操作できる、磁性ヒドロゲル製のミリロボットを開発した。柔らかく、生分解性のある素材でできており、将来体内で用いる医療用途を想定されている。

同研究成果は2022年7月11日、「ACS Applied Polymer Materials」誌に掲載された。

最近、昆虫サイズの小型で柔軟なミリロボットの研究が急速に進んでいる。磁場などの外部動力源で遠隔操作ができるため、さまざまな医療応用を目的としたミリロボットがすでに開発されている。しかし、ほとんどのミリロボットはシリコーンなどの非分解性素材でできているため、臨床応用する場合は外科手術で取り出す必要がある。また、シリコーンなどの材料は、ロボットの構造を細かく調整するには柔軟性に乏しく、複雑な動きができない。

そこで、研究チームは、柔らかく生分解性のある素材で、磁場を動力源とし、役目を終えたら簡単に溶けてなくなるというミリロボットの概念実証に取り組んだ。まず、ゼラチン溶液に酸化鉄の微粒子を混ぜたヒドロゲルを作製した。ヒドロゲルを永久磁石の上に置くと、溶液中の微粒子はゲルを外側に押し出し、磁場の線に沿って昆虫の爪状の脚構造が形成された。そして、ヒドロゲルを冷やし、硫酸アンモニウムに浸してヒドロゲルを架橋させることで、脚構造をより強固にした。また、硫酸アンモニウムの組成やゲルの厚さ、磁場強度を変えることで、脚構造を制御できることも分かった。

酸化鉄の微粒子はゲル内で磁気鎖を形成するため、磁石をミリロボットに近づけると、ミリロボットの脚が曲がり、爪でつかむように動いた。小さな円柱の物体や輪ゴムをつかみ、新しい場所に運べることを確認した。また、ドラッグデリバリーを想定した実験では、ミリロボットが色素溶液を包みこみ、胃の模型の中を転がって移動し、磁石を使用して目的の場所で広がり、色素を放せることも実証した。ミリロボットには、水溶性のゼラチンが使用されているため、水中に放置すると2日間で簡単に分解され、酸化鉄の微粒子だけが残った。

研究チームは、同技術が将来のミリロボットに活用され、ドラッグデリバリーやその他の生体医学的応用の新しい可能性を切り開くと期待している。

fabcross for エンジニアより転載)

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