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医療用検査機器開発にRaspberry Piを採用——信頼できる産業用開発プラットフォームと評価

Raspberry Piを利用した医療機器開発についてRaspberry Pi公式ブログが紹介した。

紹介された事例は、医療機器や体外診断機器の設計、開発、薬事承認において20年以上の経験を有する英eg technologyが手掛けたもので、規制が厳しい医療機器分野におけるRaspberry Piの導入事例だ。

同社は、Jupiter Diagnosticsに協力して開発したポイントオブケア機器にRaspberry Piを採用した。Jupiter Diagnosticsは、院外の臨床医が血液検査結果をタイムリーに参照し、診断と治療に活用できる機器の開発を希望していた。

Raspberry Pi Medical Development

Jupiter Diagnosticsは蛍光検出を用いて最大8個の検体を測定する機能を開発済みだったが、プロセスを自動化して商品化するための装置を必要としていた。また、正確な病理検査結果を10分以内に表示する必要があり、手で持って操作できる充電式ポータブル装置であることを必須としていた。

Raspberry Pi Medical Development

eg technologyはJupiter Diagnosticsと協力の上、求められた仕様を完全に満たす装置を作製し、蛍光検査の機能性と精度は決して損なわれないよう配慮した。画像キャプチャー、温度制御、機構制御が必要だったが、露出や光量が異なる複数の画像を結合することで、ダイナミックレンジを桁違いに拡大するアルゴリズムを実装した。

Raspberry Pi Medical Development

eg technologyのDavid Warwick氏によると、医療機器のハードウェア/ソフトウェアの開発現場において、リスク回避のための伝統的な考え方は新たにゼロから構築するベアメタルソリューションの採用が常識とされてきた。しかし、このような方式は開発コストが暴騰しないよう、システムの複雑さを管理できるレベルに保つことが前提になる。医療技術の進化に伴い、医療機器には通信インターフェースやネットワーク接続、GUI画面などが不可欠となっており、電子機器とソフトウェアの大規模な開発が必要となる。

Raspberry Piの導入に至った背景として、現在、Windows、macOS、LinuxなどメジャーなOSが世界中で恒常的に使われていて、その開発やサポートをしている開発チームの規模の大きさが挙げられている。再起動しなければならない場面も時折あるが、全体的に見ればシステム全体として非常に安定していると評価している。

安全を最重視すべきセーフティクリティカルシステムには、市販のOSよりも高いレベルの性能と信頼性が求められるとしつつ、「試行錯誤を経たシステムの利点を活用できる機器は膨大にある」ことを利点として挙げ、サードパーティーのハードウェアとソフトウェアを医療機器に統合することで「ゼロベースから開発するより、全体としてリスクが低いと判断できる段階」としている。

そのうえで、Raspberry Piのマイクロコントローラー「RP2040」は、独立した安全サブシステムで処理するシステムアーキテクチャーの作成に適しているとし、接続性の確保やサイバーセキュリティーの観点からも、Raspberry Piは医療機器開発に適した有能で信頼できる産業用開発プラットフォームであるとの結論を述べている。

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