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世界最大のテックイベント「CES 2023」にみる最新技術のトレンドとは

173カ国から3200社以上の企業が出展した「CES 2023」。以前は「Consumer Electronics Show」と呼ばれた家電見本市だったが、年々出展カテゴリーを拡大してさまざまな最先端技術の見本市へと形を変えている。今回は海外企業の出展からピックアップする。

Withings 自宅でできる尿検査デバイス「U-Scan」

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CESの出展企業は4割弱がアメリカ以外からと、国際色も豊かだ。なかでもフレンチテックには興味深いものが多いが、このヘルスケアスタートアップWithingsの「U-Scan」もそのひとつ。自宅のトイレで日常的に尿検査ができるバイオマーカー測定デバイスだ。

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本体はカートリッジ式になっており、検査したい項目群ごとにセットアップされたカートリッジを選択できる。1つのカートリッジで100項目以上のバイオマーカー測定が可能で、カートリッジの寿命は3ヶ月で、本体も1充電で3カ月動作する充電式だ。

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計測したバイオマーカーをもとに、専用アプリで体調管理や食事の改善などのアドバイス、あるいは女性特有のホルモンバランスの分析を行う。例えば「U-Scan Nutri Balance」アプリを使えば、バイオマーカーから得られる「比重」「pH値」「尿ケトン」「ビタミンCレベル」をもとに、水分補給や栄養バランスなど、個人に合った健康維持、体質改善のためのコーチングが可能だ。

Neoplant 室内の空気を浄化する植物「NEO P1」

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同じくフレンチテックのNeoplantが展示するのは、空気中のさまざまな汚染物質を除去するように遺伝子操作された観葉植物「NEO P1」だ。ポピュラーな観葉植物「ポトス」に対して遺伝子操作と共生する微生物の強化を行うことで、空気清浄能力を大幅に向上させている。

photo 濃度700ppbのトルエンに対する実験結果。時間と共に濃度が大きく減少しているのがわかる。

NEO P1がターゲットにするのは、室内に存在する汚染物質「ホルムアルデヒド」、「ベンゼン」、「トルエン」、「キシレン」の4種。NEO P1の遺伝子には、ホルムアルデヒドを植物の栄養源であるフルクトース(果糖)に変換する経路と、ベンゼン/トルエン/キシレンをタンパク質の構成要素となるアミノ酸に変換するという、2つの代謝経路が追加されている。また、ポトスと共生する微生物から2つの系統を選択し、4つの汚染物質に特化して代謝を強化させている。同社はNEO P1を、一般に空気を浄化すると言われている植物の30倍の能力を発揮するよう設計したとしている。

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NEO P1の生育と浄化性能をサポートするため、空気の循環を考慮した植木鉢、微生物を強化するタブレット、特殊な成分を配合した土壌なども開発、提供する。同社が「フィルター不要の空気清浄機」と呼ぶ「NEO P1」の予定価格は、179ドルから。水やりは2〜3週間に1度で良いとのこと。

GROW UP 手軽に植物性ミルクができるミルクメーカー「Milk Brewer」

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技術トレンドとして、人々の健康志向のニーズを捉えたヘルステック関連の出展も多い。「Milk Brewer」は、自宅で手軽に植物由来のミルクが作れるミルクメーカーだ。開発したGROW UP は、2020年設立のスタートアップだ。

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Milk Brewerを使えば、スーパーフードとして注目を集める栄養豊富なナッツ類を、プリセットメニューから選んで投入するだけで、無添加非加熱のフレッシュな植物性ミルクにできる。

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対応するのは、ココナッツ/ブラジルナッツ/ヘンプシード(麻の実)/オーツ麦(エンバク)/ピスタチオ/カシューナッツ/クルミ/マカダミア/アーモンド/ヘーゼルナッツなど。素材を指定し水と一緒に入れるだけで、6分ほどでナチュラルな自家製ドリンクが完成する。

German Bionic AIを搭載したスマート外骨格スーツ「Apogee」と作業ベスト「Smart SafetyVest」

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特に先進国を中心に、製造業、サービス業などの労働力不足は深刻な問題だ。厳しくなる労働環境の改善も、SDGsの文脈で取り上げられるケースも少なくない。身体的な負荷の高い力仕事をアシストし、作業者の負荷を低減するパワードスーツもそのひとつ。ドイツのGerman Binicは、同社として第6世代になる最新型のA I搭載型外骨格スーツ「Apogee」を発表した。

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Apogeeは、背負う形で装着することで、腰部から大腿部にかけてのサポートを行うパワードスーツだ。アシスト量はリフト方向に30kgで、作業者が歩行する場合のアシストも行う。宅配の荷物や旅客のスーツケースの取り扱い、車両のタイヤ交換など重量物を扱う作業現場への導入を前提とした設計で、防塵防水仕様となっている。

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また、単なるパワーアシストだけでなく、各種センサーを備えた作業ベスト「Smart Safety Vest」と組み合わせることで、作業状況の継続的なデータ収集と解析が可能になる。作業者ごとにパーソナライズされた人間工学的な評価と改善提案が可能。同社によれば、継続的に労働環境をモニターすることで、欠勤につながる怪我や病気のリスクを減らすことができるとしている。

Ovrtechnology 香りを合成するウェアラブルデバイス「ION3」

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メタバースに関連した展示も多いが、フェイスブックがメタに改名した当時ほどの熱気はないようにも感じられる。VRデバイスなどハードウェア開発側としては、やはりキラーコンテンツ待ちというところだろうか。そうした中、アメリカ・バーモントのスタートアップOvrtechnologyは、さまざまな種類の香りを合成できるデバイス「ION3」を発表した。

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ION3は、Bluetooth経由でPCやスマートフォン、VRヘッドセットと接続できるウェアラブルデバイスだ。数種類の基本アロマの素を含んだ単一カートリッジをセットし、基本アロマの配合を変えることで数千種類の香りの合成が可能だとしている。特に何かの匂いの再現というよりは、オリジナルの香りをデジタルで自由自在に創造できることをアピールポイントにしている。

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香りの調合は、スマホアプリで簡単にできるので、例えば瞑想やマインドフルネス、音楽に合わせた調香など、誰でも香りのクリエーターになれる。作成したレシピの共有も可能だ。もちろんVRコンテンツ用途も意識しており、UNITYやUnreal Engine開発者向けに「OVRプラグイン」を用意している。

FluentPet ペットの気持ちが伝わるコミュニケーションツール「FluentPet Connect」

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ペットと一緒に暮らしてみると、人と動物でもいろいろなコミュニケーションができることに驚かされることもある。ただ、ペットは人間の言葉は理解できても、人間のように話すのは難しい。FluentPet Connectは、ペットが人間に気持ちを伝えるために利用できるデバイスだ。

スピーカーを備えたコアユニットの「Connect Base」、それぞれに特定の行動、項目に対応した飼い主の声を録音、押すと音声が再生できる「Connect Button」、Connect Buttonをカテゴリー別に色分けして分類して設置するための「Compact HexTile」などで構成されている。

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ただ、FluentPet Connectを主に使用するのは、人間ではなくペットだ。そのための訓練をするプロセスが必要になる。飼い主は、「遊ぶ」「散歩に行く」などの自分の声をConnect Buttonに録音し、ペットの前でButtonを踏んで再生する。ペットがそのボタンを踏むと飼い主の声が再生されるので、それに応じたアクションをとる。この繰り返しにより、ペットは自分が望むアクションに対応したボタンを踏むことで、飼い主に気持ちを伝えることができるようになるという仕組みだ。

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最新版のConnectでは、スマホアプリに対応。離れた部屋にいるペットから、「お腹が空いた」とか「散歩に行きたい」というメッセージがアプリに届くようになる。ペットの学習状況の統計表示も可能で、同社によれば、ペットの能力次第だが「そろそろ公園に散歩に行きたい」とか「おもちゃのぬいぐるみで遊びたい」とか、ペットがボタンを組み合わせて文章を送るようになるという。ペットの飼い主には、ちょっと気になるプロダクトだ。

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