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昆虫サイズのマイクロロボット向けに、出力9Vの超小型リチウム電池を開発

CREDIT: COVER ART BY ALEX DAVID JEREZ ROMAN, BECKMAN INSTITUTE, UIUC

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームは、ハーメチックシール(気密封止)された耐久性のある小型リチウム電池として、これまでにない出力電圧9Vを超える高電圧マイクロ電池を開発した。

研究チームによれば、マイクロスケールデバイスの可能性を最大限に引き出すには、強力かつ小型な電池が必要だが、そのためには既存の電極構造を改良し、革新的な電池設計を考え出す必要があるという。電池を小型化させるにつれ、パッケージが電池の体積と質量に対して支配的となり、その上電極の面積が小さくなることで、電池のエネルギーとパワーが大幅に低下してしまうという問題がある。

今回研究チームは、強力なマイクロバッテリーを設計するにあたり、正極端子と負極端子を個別に構成するのではなく、パッケージの一部を端子として利用する新しいパッケージング技術を開発した。これにより、電池の小型化(0.165 cm3以下)とパッケージが占める質量分率の低減(10.2%)を実現した。さらに、電極セルを垂直かつ直列にスタックすることで、電池の高電圧化を実現した。

このマイクロバッテリーのもう一つの改良点は、エネルギー密度を高めるために、非常に高密度な電極を使用していることだ。通常の電極は、体積の40%近くが活物質ではないポリマーと炭素添加物で占められている。研究チームは、中温直接電着技術により、ポリマーやカーボン添加物を含まない高密度電極を作製した。研究チームのPaul Braun教授の研究からスピンアウトした企業である、Xerion Advanced Battery Corporation(オハイオ州デイトン)が製造する、高密度の電気メッキによるDirectPlate LiCoO2電極を用いている。

これらのマイクロバッテリーの重要な応用例は、自然災害時、捜索救助任務、人間が直接アクセスできない危険な環境で貴重な情報を得る、昆虫サイズのマイクロロボットに電力を供給することだ。共著者のJames Pikul(ペンシルバニア大学機械工学・応用力学部助教)は、「高電圧は、マイクロロボットが搭載すべき電子機器を減らすために重要です」と指摘する。「9Vの電圧があればモーターに直接電力を供給でき、さらに一部のアクチュエーターで必要とされる高電圧への昇圧時にも、エネルギー損失を低減することができます」と説明している。

fabcross for エンジニアより転載)

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