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風と雨から発電する人工葉を開発

SERENA ARMIENTO

イタリア工科大学(IIT)の研究チームは、人工葉を用いて風や雨滴から電力を生み出すエネルギーハーベスティング(環境発電)システムを開発した。LEDライトを点灯できる電力を生産し、システム自身に電力を供給することが可能だ。研究成果は『IEEE Robotics and Automation Letters.』に2023年2月28日付で公開されている。

エネルギーハーベスティングとは、身の回りの微小なエネルギーを収穫(ハーベスト)して電力に変換する技術だ。今回開発したシステムは、積層構造の人工の葉を本物の植物の葉の間に追加して使用する。

人工葉の下部にはシリコーンエラストマー層があり、風力から電気を作る際に利用する。風が吹くと人工葉と植物の葉は揺れて、互いに接触したり離れたりする。離れるときに静電気が発生し、植物内部に取り込まれて電気が流れる。この電流を電極により回収する仕組みだ。植物を利用した既存のエネルギーハーベスティングシステムの中には、風から電気を作るために同様の技術を利用しているものもある。しかし、雨滴からも発電できる点が、今回開発したシステムの特徴だ。

雨滴から発電するために、葉の上部はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)層になっている。FEP層に雨滴が落ちると人工葉の表面が帯電し、人工葉の内部と上部にある電極が接続してコンデンサが形成される。雨滴が表面に広がると、電極間の容量結合が変化して、電流が発生する。

研究チームは、この人工葉システムをキョウチクトウの葉に組み込んで、エネルギー採取能を調べた。その結果、1滴の水滴から最高電圧40V以上、最高電流15μA以上が得られ、LEDライト11個に電力を供給できることを実証した。

このシステムは、風と雨のエネルギーを別々にも、同時にも利用できる。風力エネルギーを活用した既存のエネルギーハーベスティングシステムは、装置の表面が濡れると発電量が低下する傾向にある。しかし、人工葉システムは上部がFEP層となっているため、濡れた状態でも多くの電力を回収できる。

研究チームは、この人工葉エネルギーハーベスティングシステムは、農業や林業など植物の健康状態を観察したり気候条件をモニタリングするための、自己発電型モニターへの応用に期待できるとしている。

fabcross for エンジニアより転載)

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