MIT、大規模な重力波検出装置「Cosmic Explorer」を建造へ
2023/11/05 06:30
宇宙を揺らす波動の探索が、大きく前進した。より大きく、より優れた重力波検出器を建設するマサチューセッツ工科大学(MIT)主導のプロジェクト「Cosmic Explorer」が、全米科学財団から今後3年間で900万ドル(約13億4500万円)を受け取ることになった。この資金注入は、Cosmic Explorerの設計段階をサポートするものだ。Cosmic Explorerは次世代重力波観測装置で、宇宙誕生の初期から時空のさざ波を拾い上げることが期待されている。そのために、観測所の検出器は小さな都市ほどの大きさになる予定だ。
この天文台のコンセプト・デザインは、MITとカリフォルニア工科大学が運営するLIGO(Laser Interferometer Gravitational-wave Observatory:レーザー干渉計重力波観測所)の検出器と似ている。LIGOは、同じ地点から2本のトンネルを通り、再び戻ってくる2本のレーザーのタイミングを測定することで、重力波を検知する。2本のレーザーの到達時間に差があれば、重力波がL字型検出器を通過したというシグナルとなる。LIGOは、アメリカの異なる場所に設置された2カ所の検出施設を使用している。同様の検出器セットであるVirgoはイタリアで、3つ目のKAGRAは日本で稼働しており、LIGO-Virgo-KAGRAコラボレーションによる共同観測の計画も進められている。
この既存の検出器ネットワークが連携して、ブラックホールや中性子星の合体などによる重力波発生源からの波動を数日ごとに拾っている。Cosmic Explorerによって、この割合が数分に1回に跳ね上がるはずだと科学者たちは信じている。これらの検出から得られる知見は、宇宙論における最大の疑問のいくつかに答えを与えてくれるかもしれない。
Cosmic Explorerは、巨大なLIGOとも言える。LIGOの検出器は1本のアームの長さは4kmだが、Cosmic Explorerは1辺が40kmと、その10倍の大きさになる。重力波から得られる信号は基本的に検出器の大きさに比例するため、より遠くにある情報源を見ることができるようになる。LIGOの感度では、約15億年前の天体を見ることができるが、Cosmic Explorerでは100億年以上前の天体を観測できると考えられている。
また、より明瞭で大きな信号で天体を観測することができる。LIGOはS/N比30での検出だが、同じ信号をCosmic Explorerで検出すると、S/N比は3000になる。そのため、アインシュタインの相対性理論が正しいかどうかを検証するような、高感度な測定が必要なものは、Cosmic Explorerを使うことで、より正確な検証が可能だと言われている。
(fabcross for エンジニアより転載)