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地球温暖化を防止する建物外壁材——高い反射率と熱放射率を持つセラミック材料を開発

Credit: City University of Hong Kong

香港城市大学の研究チームが、高い日射反射率を有する受動的放射冷却(Passive Radiative Cooling:PRC)セラミック材料を開発した。酸化アルミニウム(Al2O3)粒子が分散した多孔質構造のセラミック材料であり、日射光領域波長に対しては高い反射率を持ち、中赤外線領域波長に対しては高い熱放射率を持つ。建物外面に適用した場合、昼間の時間帯において130W/m2の冷却効果を発揮する。冷却のためのエネルギーや冷媒が不要で、コスト効率が高く耐久性があり、建築物などを中心としたさまざまな用途に適しており、地球温暖化を軽減すると期待されている。研究成果が、2023年11月9日の『Science』誌に公開されている。

エネルギーや冷媒を用いないPRC技術は、屋内外空間の冷房需要が増大する中で、環境公害を低減し地球温暖化を軽減する観点で、最も期待できるグリーンな冷却手法の一つだ。地球表面積の1~2%にPRCが適用されれば、気温上昇が止まり地球温暖化が停止するという推測もある。近年、コーティング、薄膜、エアロゲルなどを利用したPRC技術が活発に研究されるようになっている。光の伝播を制御し屈折率を変化させるナノフォトニック構造を用いたPRCも注目され、実験やシミュレーションによって優れたPRC効果が実証されている。だが、現状では高コストで多様な用途に対する柔軟性に劣ることから、広汎な実用化には限界があると考えられている。これに代わる安価なフォトニック高分子も、耐候性に欠け、日射反射効率が低いという課題がある。

研究チームは、多層構造の多孔質セラミックを活用することによって、コスト効率と耐久性が高く、建築物など多様な用途に応用できるPRC材料の開発にチャレンジした。その結果、資源的に豊富なAl2O3粒子が分散する多層的な多孔質構造により、優れたPRC効果を実現できることを見出した。Al2O3をPES樹脂と混合した溶液から出発し、位相反転と焼結のシンプルで量産可能な2段階プロセスによって、多層的な多孔質構造を得ることに成功した。最終的に高分子成分は蒸発して材料中に残留しないので、紫外線などによる材料劣化は生じず、機械的強度も高いので耐候性や耐久性、耐火性に優れるとともに、さまざまな着色も可能だ。

Al2O3はバンドギャップが広く、太陽光の吸収が極少化される。日射光領域(0.25-2.5μm)における反射率が99.6%と高く、また中赤外線領域(8-13μm)における熱放散が大きく、96.5%の高い熱放射率を達成している。更に、高温において超親水性を示し、水滴などが瞬時に拡散し急速に含浸するので、熱伝導率を低下させる蒸気膜が形成されず、液体の蒸発による冷却効果が大きくなる。

建物外面に適用した場合、昼間の時間帯において130W/m2の冷却効果を発揮し、室内冷房に要する電力を20%削減できることが明らかになった。「エネルギー多量消費型冷房システムに頼らなくても済む可能性を実証し、電力グリッドの過負荷や温室効果ガス排出、都市部のヒートアイランドを緩和することができる、サステナブルなソリューションが得られる」と、研究チームは説明する。

fabcross for エンジニアより転載)

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