木材由来の環境に優しく安定な有機太陽電池の開発
2024/01/04 06:30
スウェーデンのリンショーピング大学(LiU)と王立工科大学(KTH)の研究チームが、木材パルプ由来のクラフトリグニンを使用した、環境に優しく安定な太陽電池を開発した。
同研究成果は2023年10月9日、「Advanced Materials」誌に掲載された。
シリコン太陽電池は効率的だが、エネルギー消費の高い複雑な製造工程を要し、有害な化学物質の流出につながる危険性も有する。対して、有機太陽電池は、低コストで単純な製造工程で済み、さらに軽量で柔軟性を持つ。屋内での使用や衣服に取り付けて個人用電子機器の電力源などの用途に応用できるため、注目の研究分野となっている。
しかし、有機太陽電池はプラスチック、つまり石油由来のポリマーでできているため、環境に優しいとは言い難い。
研究チームは、電極界面の電子輸送層にクラフトリグニンを用いた有機太陽電池を開発した。クラフトリグニンは、紙の原料となるパルプの製造において木材から抜きとる成分で、バイオ燃料として用いられている。今のところ、リグニンで構成されるのは太陽電池の一部であるが、研究チームの長期的な目標は、ほぼ完全に木質材料からなる太陽電池を作ることである。
LiUの主任研究員であるQilun Zhang氏は、「私たちはクラフトリグニンから電極界面層を構成する複合材料を作りました。その結果、太陽電池がより安定化することが分かりました。クラフトリグニンは、多くの水素結合を形成でき、太陽電池の安定化に役立ちます」と説明した。
有機太陽電池は、主に屋内用途ですでに使用されており、センサーなどの低エネルギー機器の電力源にもなる。同技術は、太陽電池をより大きな用途に進展させ、環境により優しくする。
LiUのMats Fahlman教授は、「有機太陽電池が、太陽電池の中で最も効率的になることはないと考えます。しかし、その利点は、無害で、持続可能で、安価であることです。もし効率が15〜20%であれば、ほとんどの用途には十分すぎるほどです」と述べた。
(fabcross for エンジニアより転載)