つる植物からインスパイアを受けて開発された、光と熱がある方向に動く自己駆動式ロボット
2024/01/12 06:30
米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究チームが、つる植物にインスパイアされたクローラーロボットを開発した。光源や熱源を探し出し、その方向に向かって移動することができる。この研究の詳細は、2023年11月2日付で『IEEE Robotics and Automation Letters』に掲載された。
非常に長い時間をかけて進化したつる植物は、光源を探し出し、太陽光を吸収して成長するために、最適な方向に向かって伸びて育つ能力を持っている。
研究チームは、まずデバイスが熱と光に自動的に引き寄せられるようにするため、新しくアクチュエーターを開発し、「光熱相変化系アクチュエーター(Photothermal Phase-change Series Actuator:PPSA)」と名付けた。PPSAは低沸点流体中に光吸収体を含んでおり、光吸収体は本体内部側面に沿って取り付けてある、たくさんの小さな袋にそれぞれ入っている。
PPSAは光にさらされると、光を吸収して発熱し、水蒸気で膨張して収縮する。PPSAが加圧されると、先端内部から材料を出して伸長する。同時に、PPSAの光が当たっている側が収縮して短くなり、光源や熱源のほうに向かって進む。
このように、PPSAには光と熱を探し求める能力があるため、複雑な集中制御装置を必要としない。また、先端の一部が損傷したり取り除かれたりしても、他の部分は完全に機能するという利点もある。
研究チームは、システムを赤外光源からさまざまな距離の場所に置いてテストし、近距離ではシステムが光源に引き寄せられることを確認した。その能力は光の強さによって決まり、より強い光源の場合、デバイスがその方向に向かってより曲がることが分かった。
PPSAが「つる」を完全に曲げるには約90秒かかるが、デバイスには光源と熱源を探し求めるという性質があるため、障害物をうまく避けることもできた。さらに、非常に弱い光でも反応するという特長もある。快晴時相当の太陽光の強さは1平方メートル当たり約1000Wだが、このロボットは、太陽光の強さと比較してほんのわずかな光の強さでも動作することが示された。
この技術はまだ発展途上の段階だが、シンプルであり低コストで作れる上に、太陽追尾に関連する用途だけでなく、くすぶっている火の検知や消火にも役立つことも考えられるという。ただし、プロトタイプを現実の環境に導入するには、高温下での性能と火災感知能力を向上させる必要がある。
研究チームは、次のステップとして、火から放射される波長に対してより強く反応するアクチュエーターを設計することと、応答時間がより速いアクチュエーターを開発することを考えている。
(fabcross for エンジニアより転載)