家具サイズを数分で造形——MIT、高速液体金属3Dプリンターを開発
2024/02/22 06:30
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちは、液体金属を使った高速プリントを可能にする積層造形技術を開発し、テーブルの脚や椅子のフレームのような大型部品を数分で製造できることを実証した。
液体金属造形(LMP:Liquid Metal Printing)と呼ばれるこの技術は、微小なガラスビーズを敷き詰めた床に、あらかじめ決められた経路に沿って溶融アルミニウムを滴下させるものだ。アルミニウムは短時間で凝固し3D構造を形成する。研究者らによると、LMPは同等の金属3Dプリントプロセスよりも少なくとも10倍速く、金属を加熱して溶かす手法は他の手順よりも効率的だという。
LMP方式は、造形速度と造形サイズを優先し、解像度を犠牲にしている。LMPは他の低速な積層造形技術で製造される部品よりも大型の部品を低コストで造形できるが、高い解像度は望めない。そのため、LMPで製造される部品は、建築、建設、工業デザインなど、大型構造物で各部にそれほど細かなディテールを必要としない用途に向いている。また、リサイクル金属やスクラップ金属を使ったラピッドプロトタイピングにも有効活用できるだろう。
研究チームは、アルミニウムでフレームやテーブル、椅子などの部品を造形し、それが造形後の機械加工に十分耐えるほど強靭であることを示した。これにより、LMPで造形した部品を高精度なプロセスや他の部品と組み合わせることで、きちんと機能する家具を製造する手法を提示した。
3Dプリントの工程は、まず食パンほどのサイズのアルミニウムを電気炉に投入し、炉内の金属コイルでアルミニウムの融点660℃をわずかに上回る摂氏700℃まで加熱する。アルミニウムは黒鉛るつぼの中で高温に保たれた状態で、セラミックノズルからあらかじめ設定された経路に沿ってプリントベッドへと自然落下する。プリントベッドに充填する材料として、グラファイト粉末や塩など多くの材料を試した結果、100μm径のガラスビーズを選択した。この微小なガラスビーズは溶融アルミニウムの高温に耐え、アルミニウムが素早く冷えるよう、反応しない保持材として機能する。
LMPによる造形をサポートするため、時間あたりにプリントベッドに滴下する液体金属の量を推定する数値モデルを開発した。これは、ノズルがガラスビーズの中に差し込まれているため、溶融アルミニウムが流し込まれる様子を観察できないためだ。造形プロセス中の任意の時点で何が起きているのかをシミュレートする方法が必要だったと、研究チームは語る。将来的に、一般の人々がリサイクルアルミニウムを溶かして部品を造形できるようになれば、金属3Dプリントのゲームチェンジャーとなる可能性があると述べている。
(fabcross for エンジニアより転載)