硬くて伸びやすい、ポリマー材料「ガラス状ゲル」を開発
2024/07/20 06:30
米ノースカロライナ州立大学を中心とする研究チームが、50%以上を液体で構成した、硬くて伸びるポリマー材料「ガラス状ゲル」を開発した。ガラス状ゲルの製造は容易で、さまざまな応用が期待できるという。
同研究成果は2024年6月19日、『Nature』誌に掲載された。
ゲルとガラス状ポリマーは、本来は別物と見なされてきた材料だ。水筒や飛行機の窓などに使われるガラス状ポリマーは、硬くて壊れやすい。コンタクトレンズに使われるゲルは、液体を含み、柔らかくて伸びやすい。
研究チームは、ガラス状ポリマーと同じくらい硬く、十分な力を加えても壊れず、ゲルのように元の長さの5倍まで伸びる材料を開発して、「ガラス状ゲル」と名付けた。ガラス状ゲルは一度伸びても熱で元の長さに戻る性質を持ち、また、硬い材料としては珍しく、高い粘着性を持つ。ガラス状ゲルを特徴づける重要な点は、素材が50%以上液体で構成され、プラスチックより電気伝導性を示すということだ。
ガラス状ゲルは、ガラス状ポリマーの液体前駆体とイオン液体の混合液を型に流し込み、紫外線で硬化させることで、容易に作製可能だ。
ゲルの作製では、通常、ポリマーに溶媒を加えると、溶媒がポリマー鎖を押し広げ、ポリマーを柔らかく伸びやすくさせる。ガラス状ゲルでは同様に、イオン液体がポリマー鎖を押し広げ、伸びやすくさせるが、同時にイオン液体がポリマー鎖を引き寄せ、丈夫で均質なネットワークを形成するため、素材が硬くなる。結果、ガラス状ポリマーのように硬く、ゲルのように伸びやすいガラス状ゲルが完成する。
研究チームは、さまざまな種類のポリマーとイオン液体を使用してガラス状ゲルの作製に成功した。電荷を帯びたポリマーや極性のあるポリマーは、イオン液体と親和性があるため、ガラス状ゲルへの適用が期待できる。
ノースカロライナ州立大学のMichael Dickey教授は、「ガラス状ゲルは、非常に簡単に製造できます。私たちは、ガラス状ゲルの応用のために共同研究者と協力したいと考えています」と説明した。
(fabcross for エンジニアより転載)