マイクロ波焼結法により、月面表土を使って「宇宙レンガ」を生産 韓国建設技術研究院
2024/08/21 06:30
韓国建設技術研究院(KICT)は2024年7月10日、同研究院の研究チームが月に存在する資源を用いて建設資材を製造する技術を開発したと発表した。月面土壌の模擬材料を用い、加熱条件を最適化したマイクロ波焼結法により、月面基地などの建設資材に適したブロック「宇宙レンガ」を製造できることを実証したものだ。
最近、月で氷などのさまざまな資源が発見され、宇宙探査における持続可能な基地の建設場所として月の可能性が注目されている。NASAも月での長期滞在を目的としたアルテミス計画を発表している。それには、月面基地建設などインフラ整備が必要になってくるが、地球から月に建設資材を宇宙船を使って輸送した場合、重量1kgあたり120万ドルの膨大なコストがかかる。これにより、地球から月に建設資材を輸送するのは現実的ではなく、一方で月に存在する資源を活用して建設資材が製造できれば、大きなコスト節約に繋がる。KICTの研究チームは、月に存在する資源を用いて建設資材を製造する技術の開発にチャレンジした。
月に存在する資源のなかで、建設資材に最も容易に活用できるのは、月面土壌である表土だ。月面表土は細かい粒子から構成されており、熱を用いて焼結できるが、宇宙環境において加熱焼結する場合、エネルギー効率を考慮する必要があり、その観点でマイクロ波による加熱は非常に有利であると考えられる。研究チームは、マイクロ波焼結法を活用して、月面表土をシミュレーションした模擬材料の加熱と固化による「宇宙レンガ」ブロック製造に取り組んだ。
マイクロ波を用いて月面表土を加熱焼結する場合、局所的なホットスポットやコールドスポットが生成され、このようなスポットは局所的な熱暴走によって均質な加熱や焼結を阻害する。研究チームはこれを解決するのに、特定の温度における定温保持を含めたステップ状の加熱プログラムを考案し、焼結ブロックの温度を均質化させることに成功した。さらに、月面表土は水を含む揮発性物質を含んでおり、これらの揮発性物質を加熱すると、揮発性ガスの放出に起因して焼結時に内部クラックを発生させてしまう。研究チームは、真空下250℃において模擬表土を予備加熱することにより、クラック生成を抑制できることを確認した。
焼結ブロックの建設資材としての健全性を評価するため、製造ブロックの複数箇所からサンプルを採取し、平均密度、空孔密度および圧縮強度を測定した結果、各々2.11g/cm3、29.23%および13.66MPa、各々の標準偏差は0.03、1.01および1.76であった。また、X線CT画像による内質調査も実施し、焼結ブロック材質の健全性と均質性を確認した。研究チームは、今後この技術を宇宙環境で実証することによって、拡大する宇宙建設技術のニーズに対応することができると期待している。
研究成果は、2024年7月1日に『Building Engineering』誌に公開されている。
(fabcross for エンジニアより転載)