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新聞印刷並みの速度で生産できる、高効率で安定した太陽電池を開発 香港城市大学

香港城市大学(CityUHK)は2024年7月8日、高効率な印刷が可能で、動作が安定したペロブスカイト太陽電池を開発したと発表した。材料科学のLee Shau Kee教授とAlex Jen Kwan-yue教授が率いた今回の研究成果は、『Nature Energy』誌に論文が掲載された。

この太陽電池は、新聞印刷と同程度の速度で1日に1000枚生産できる。また、柔軟性と半透明性を持ち、光を吸収するガラス窓にも応用できる。この特徴により、香港や深圳のような高層ビルの多い都市で、「都市型太陽光発電所」といった構想を実現できるという。

研究チームによると、ワイドバンドギャップペロブスカイトの動作安定性の確立は、10年以上にわたる課題であった。本研究のアプローチでは、ヨウ素を選択的に還元し、金属を酸化する適切な化学ポテンシャルを持つ一連の有機酸化還元媒介物質を設計した。

研究チームは、ペロブスカイトデバイスをワイドバンドギャップサブセルとして一体型のペロブスカイト有機タンデム太陽電池に組み込んだ後、カプセル化されたタンデムセルを1-SUN(ワンサン)の太陽光照射(AM 1.5Gスペクトル、UVフィルターなし)にさらすテストを実施した。

テストの結果、約45℃で500時間連続運転した後も、初期の電力変換効率(PCE : Power Conversion Efficiency)の92%を維持し、効率は25.22%(認証値24.27%)という過去最高値を得た。さらに、湿度の高い空気(相対湿度70~80%)でも良好な動作安定性を示した。

また研究チームは、新世代の印刷可能な高効率ペロブスカイト太陽電池モジュールとして、革新技術委員会のRAISe+スキーム(Research, Academic and Industry Sectors One-plus Scheme)の第1回助成金を獲得した。研究成果は、香港の新興企業HKTech Solar Limitedを通じて実用化される予定だ。

ペロブスカイト太陽電池は、室内の弱い光の下でもエネルギーを吸収し、機械的な柔軟性も備えている。これらの特徴により、大規模なビルや農場からIoT機器に至るまで、変化に富んだシナリオに適用できる。

研究チームは今後、1年半以内に香港で年間生産量25MWのパイロット生産ラインを立ち上げる予定だという。また、投資家とマッチングした産業分野向けに製品を発売して、アプリケーションをテストする計画だ。

fabcross for エンジニアより転載)

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