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EVや電動航空機を高性能化するリチウム金属電池に関する研究

Image credit: Chalmers University of Technology | Henrik Sandsjö

スウェーデンのチャルマース工科大学は2024年7月18日、同大学物理学科の研究チームがエネルギー密度が高く、電気自動車(EV)の長距離走行などに適する大容量電池の有力候補であるリチウム金属電池について、最大の問題点である、充放電サイクルに伴う不安定性および不安全性を回避する手法を提案したと発表した。アルカリ金属の電析過程を3D X線を用いて詳細に解析することを通じて、リチウム金属電極を電気メッキ法により電池内部に造り込むことによって、電池外部の不純物と反応することなく、安定した表面層を持つ電極を製造できることを見いだした。

EVを中心にリチウムイオン電池が広く活用されているが、さらに長距離走行可能なEVや短距離を目標とした電動航空機の開発に対して、重量/体積あたりのエネルギー密度が高い電池が求められるようになると考えられている。負極活物質として通常の黒鉛電極の代わりにリチウム金属やその合金からなるリチウム金属電極を用いた場合、その理論容量は黒鉛電極の約10倍と極めて大きく、大容量電池の有力候補として研究開発が進められている。しかし、充放電サイクルを繰り返すと負極にリチウムが樹枝状に析出成長した「デンドライト」が形成され、セパレータを貫通して内部短絡を生じ発火事故を起こすなど、安全性の問題が実用化の障害になっている。

研究チームは3D X線を用い、リチウム金属電池内部における充放電時のリチウムの挙動をリアルタイムで観察し、デンドライトの生成などリチウム電極表面性状の変化を捉え、電池の安定性や安全性および機能性に及ぼす影響について系統的に調べた。そして「リチウムは反応性の高いアルカリ金属の1つであり、非常に不活性な環境においても微量の不純物と反応し、電池におけるリチウムの挙動に予測不能な悪影響を与える表面層を形成してしまう」と説明した。

研究チームは、アルカリ金属の中でも反応性が極めて高いカリウムをモデルケースとすることに着目し、電極表面における保護層である固体電解質界面(SEI)の形成など、さまざまな現象が同時に生じる複雑な反応やプロセスを分離して解析することに成功した。その結果、リチウム電極を電池内部において電気めっきプロセスで造り込むことによって、周囲環境との反応を防止し、デンドライトの生成を回避できる予測可能な安定した電極を製造できる可能性を突き止めた。

この研究は、チャルマース工科大学、ウプサラ大学、ルンド大学における電池技術に関する基礎研究に対する政府助成の一環として実施されている。「このような基礎研究は、新しい電池の概念および技術を創出する道を開く上で重要である。持続可能な社会の発展に寄与する技術革新のための基礎となり、その重要性が増している」と研究チームは語る。

研究成果が、2024年2月13日に『Electrochemical Society』誌に公開されている。

fabcross for エンジニアより転載)

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