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空気から水を回収する機構をもつ、携帯型の水分捕集システム

韓国機械材料研究院(KIMM)は2024年8月20日、空気中の水分を集めて浄化し、飲料水を生成するポータブル集湿システムを開発したと発表した。軍事活動やキャンプ、へき地や山間部でのサバイバルなど、幅広い応用が期待されている。

今回開発した携帯型水分捕集システムは、「吸着→脱着→凝縮→除菌」という集湿サイクルをコア技術として、大量の水分を回収する。エネルギー効率も、従来の除湿装置に比べて2倍以上に向上した。

また、通常水分が凝縮する冷却フィンの表面に存在する細菌を、瞬間的に80℃に加熱することで1分以内に殺菌する。同時に、集水された水は、環境に優しく分解可能な珪藻ベースのフィルターによって浄化されるため、安全性も高い。

エアコンなどに代表される従来の「集湿システム」は、水分の過飽和対策として、凝縮器、蒸発器、圧縮機で構成されているが、騒音や重量、冷媒による環境汚染の懸念があった。この課題に対しては、熱電モジュールタイプの集湿システムの開発が進められているが、コンプレッサーを搭載した従来式に比べて、集湿エネルギー効率が大幅に低下する点が課題であった。

開発したシステムの集湿能力は、従来の熱電モジュールタイプの2倍以上だ。このポイントは、熱電モジュールの発熱面を吸湿板として利用することにある。吸湿板の「吸湿モード」で空気中の水分を集め、「加熱モード」で凝縮版に移動させることで、集湿効率を高めている。さらに、加熱面から発生する高温の熱エネルギーを利用して水分を脱着するため、加熱面からの熱風の放出も抑えられている。

また、1つの熱電モジュールで吸水、凝縮、殺菌の各モードを作動させることで、消費電力を抑えた。さらに、珪藻土と生分解性ポリマーを使用して、生分解可能な環境に優しいフィルターを開発した。これにより、重金属イオンだけでなく、ナノ/マイクロプラスチック粒子も除去できる浄水システムも構築した。

研究チームは、すでに独自に開発した「携帯型水分捕集システム」を適用した重量3kgのウォーターハーベスターの商品化を計画している。同システムは、公的認証機関の試験証明書を取得し、採水性能と飲料水の安全性が確認されているという。

KIMMは同技術を、超高純度流体移送システムを扱うシンガポールのPuresysに移管することで、携帯型から大容量型まで幅広い商品化を目指す。

fabcross for エンジニアより転載)

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