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電飾造形ワークショップをやってみてわかった、オンラインイベントのコツと意義

光る剣など電飾はコスプレの表現として用いられている。(撮影:ショベ/モデル:ダリア)

2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、対面でのイベントに制約がかかる中、オンラインでのワークショップが増えつつあります。

オンラインによるものづくり系のワークショップは加工、制作、失敗したときの対応など、リモートでは難しいと思われる要素もある一方で、これまで会えなかった距離にいる人や、交わる機会の無かった人同士をつなぐメリットもあります。そこで今回は、石川県でメイカースペースの運営やイベントの企画に携わる五味さんに、オンラインワークショップの実施を通じてMakerがワークショップを企画・運営する意義について寄稿いただきました。(編集部)

コスプレ人口は多いが、凝った電飾はハードルが高い

現在、コスプレは世界中でカジュアルに楽しまれている。自分の好きなキャラクターになり、そのキャラクターの出る作品が好きな人たちとコミュニケーションを取る。好きな作品へのリスペクトとしてシーンを再現する。そんな方々を写真や動画にして残したり、コスプレを楽しむ人向けに衣装や小道具などを作り支える。楽しみ方は人それぞれだ。

中でも、好きな作品へのリスペクトを表現する手段としてさまざまな工夫を盛り込む方は増えており、その工夫の1つとして電飾が利用されている。コスプレを楽しむ人にとって、好きな作品に出てくる光る剣や杖、機械仕掛けの光る鎧のような象徴的なアイテムはぜひ再現したいと思うものである。

100均のLEDを用いた電飾例。フィルターを組み合わせて緑色に光る目を表現。(提供:メガデブ) 100均のLEDを用いた電飾例。フィルターを組み合わせて緑色に光る目を表現。(提供:メガデブ)

その実現方法としては、100均のLEDを分解して組み込んだり、リモコンなどで制御できる汎用のLEDテープを用いたりすることが多い。安全に衣装に組み込み、適切な電源や輝度にするには技術が必要なので、各々がノウハウを培って工夫して使っている。しかしこれらの手法では、時間経過による制御や特殊なエフェクト、ギミックとの連動といった細かいニュアンスを表現するには限界がある。それを乗り越えるための1つの手法として、マイコンによる電飾制御が用いられている。

最近では、1つ1つの色を制御可能なフルカラーLEDを、Arduinoなどの手に入りやすいマイコンボードで制御できるようになった。また、高機能のライブラリーを手軽に使えたり、分からないことがあってもネットで検索すれば情報を得られたりするなど、プログラミングを用いた電飾はかなり気軽にできるようになった。私もそうやって電飾を用いた作品を作る1人である。しかし、プログラミングや電子回路を知らない人が0から始めようとなると、なかなかに難しいのではないかと考えていた。

ロボットのコスプレのバーニアに使われるフルカラーLED。(撮影:Comet./モデル:らぷらす) ロボットのコスプレのバーニアに使われるフルカラーLED。(撮影:Comet./モデル:らぷらす)

コスプレ界隈もコロナ禍の影響でイベントが軒並み中止となり、コスプレを楽しむ場が失われていた。落ち込んで活動を休止する人もいたが、この状況に失望せずコスプレを続ける人もいる。私は、そんな方々と一緒にこの状況を乗り越えたいと考えた。

そういった経緯から、コスプレイヤーの皆さんが、イベントができない間に技術を習得し、イベントが開催できるようになったときに個々の作品がレベルアップしてより楽しめるようになるよう、造形の手法とmicro:bitによるブロックプログラミングを用いた電飾を学ぶための電飾造形ワークショップ「テクコスワークショップ Vol.1 」を2月20日に開催するに至った。

micro:bitを用いてブロックプログラミングで電飾を行った。実際の動作の様子を画面に映したり、資料のどこをやっているかも同時に見られるようにしている。(提供:五味) micro:bitを用いてブロックプログラミングで電飾を行った。実際の動作の様子を画面に映したり、資料のどこをやっているかも同時に見られるようにしている。(提供:五味)

テクコスワークショップの参加者は、電飾プログラミングの基礎を学ぶことが目的だ。しかし、講師である造形屋の山葵さんいちごさんは、企業のイベントや雑誌のための造形の仕事を受けているプロである。彼らが実践している細かいテクニックや、注意を払っている点などのノウハウを得られるという意味では、基礎にとどまらず実践で生かせることが多い内容となっている。

今回は、対面を避けるためにZoomを用いたオンラインでの開催となった。しかし、造形と電飾というハードウェア的要素のあるワークショップをどのようにオンラインで開催するかは大きな課題であった。何かトラブルがあった場合、オフラインイベントであれば講師側が直接解決できるだろう。しかしオンラインとなると、助言はできるがその対処は参加者自身が行うことになる。そのため、トラブルの発生を極力避けることが重要である。工夫した点は次の3つだ。

1. 使用にスキルを求めない材料を選ぶ

例えばフルカラーLEDははんだ付けを使わずコネクタで接続できるものを選ぶなど、今回のワークショップで学ばない技術やスキルを使わなくても完成させられる材料を選定した。

ワークショップに用いる材料。はんだ付けなしでも電飾を楽しめる。(提供:五味) ワークショップに用いる材料。はんだ付けなしでも電飾を楽しめる。(提供:五味)

2. 材料の調達や動作確認は講師があらかじめ行う

材料の注文ミスや「部品がうまく動作しない」といったトラブルを避けるため、参加者それぞれに注文を任せるのではなく、講師が材料をまとめて調達し、予備部品を含めて動作確認した材料をあらかじめ参加者に配送する方式をとった。

3. トラブルが起きても追体験できるようにする

参加者の環境に依存したトラブルが発生した場合、トラブルが起きてもその場で解決できない可能性がある。そのため、ワークショップの配信はYoutube Liveでアーカイブしておいたり、資料のデータを参加者に公開して後で閲覧できるようにしたり、トラブルが起きても解決後にワークショップの内容を参照できる環境を整えた。

ワークショップの資料。アニメーションを用いたプログラミング手法の説明をはじめ、材料や電飾の予備知識、コスプレ向けの電飾テクニックなどがまとめられており、参加者は自由に閲覧できる。(提供:五味) ワークショップの資料。アニメーションを用いたプログラミング手法の説明をはじめ、材料や電飾の予備知識、コスプレ向けの電飾テクニックなどがまとめられており、参加者は自由に閲覧できる。(提供:五味)

これらの工夫が功を奏し、当日はハードウェアのトラブルは起きなかった。参加者の1人がPCのトラブルでプログラミングができずイベント内で対応できない状況に陥ったが、イベント後に配信環境をそのまま使い、画面共有やカメラを用いて私が状況を判断・解決し、 参加者は資料とアーカイブで復習することができた。私は今回の講座でアーカイブを初めて導入したのだが、少ない設定で配信したデータをそのまま保存・公開できたのでとても便利だ。配信を前提としたオンラインでのイベント開催のメリットの1つのように思える。

他にも、材料はオンラインショップで個人でも入手できるもののみを選び、購入できるショップの情報を資料にまとめたり、電飾の予備知識やコスプレ向けの電飾テクニックを資料のおまけとして追加したりして、参加者が今回学んだことを別の作品にも生かせるよう工夫した。

ハートを造形し電飾を施した様子。(提供:五味) ハートを造形し電飾を施した様子。(提供:五味)

いくつかの工夫は必要だが、ハードウェア的要素があるオンラインでのワークショップイベントはできることが分かった。ただ、単発で開くだけでは技術を普及させることはできず、継続するからこそ広まり、定着していくと考えているため、今後も進め方などを改良しながらテクコスワークショップを継続していくつもりである。

個人でのものづくりのハードルが下がった今日、日々技術を学び、面白い作品やネタを作る方は増えている。ものづくりにデジタル加工機を用いたり、LEDやセンサー、モーターを組み合わせれば、新しい表現を生み出したり、制作時間を短縮したりできる。そして、その浮いた時間を使って表現力の向上を図る、あるいは別の作品に打ち込むなどすれば、大きな恩恵を得ることができる。

だが一方で、それを知らない人はまだまだたくさんいるし、分かっていても技術がないためにできない人もいる。そんな方々に技術を教えることで、自分の知らない表現が生まれ、技術を使う人が増え、ものづくりコミュニティが栄えていく。それが自分自身のものづくりを長く楽しむための支えにもなってくれる。それがワークショップを行う面白さの1つである。

今回のワークショップでも使用したmicro:bit用電飾モジュール「yin:bit v2.0」

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