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半メイカースペース半自宅 おすそ分け型マイクロメイカースペース始めました

fabcrossでデジタルファブリケーションを使ったものづくりの記事を書いているむらさきです。本格的なメイカースペースではないけれど、自分だけで使うのでもない。土間付きの家に引っ越したのをきっかけに、マイクロなメイカースペース的なものを始めました。個人が趣味の範囲でも始められる、小さなラボの立ち上げの様子、場所作りや運営、お金の話などをお届けします。

三浦半島の先っぽにある、ものづくりスペース

神奈川県の三浦半島の先っぽ、港町の三崎にある自宅。在宅勤務兼自分の工作スペースとして使っている土間を、誰でも利用できるよう月に1度開放しています。機材は3Dプリンター/カッティングプロッター、ミシン、ハンディCNC、レーザー加工機など。以前から自分が使うためにそろえていた機材をそのまま使ってもらえるようにしています。

コロナ禍で引っ越し、物件との出会い

2018年のMaker Faire Taipeiにも出展していました。 2018年のMaker Faire Taipeiにも出展していました。

以前は東京都内で友人とシェアハウスに住んでいました。そのシェアハウスを拠点に「自分の生活に必要なものを自分で作る」をテーマにしたグループを作り、Maker Faireに出たり同人誌を作ったりと活動していました。しかしコロナ禍で集まることが難しくなり、活動は下火に。さらに契約更新のタイミングでシェアハウスが解散。夫婦で引越しすることになりました。

その際「せっかくなら工作スペースがとれる家がいい!」と、土間やガレージがある家を不動産サイトで探していたところたまたま見つけたのが三崎の物件です。都内で探していたのではじめは候補外だったのですが、物件を見に行ったところ町に一目ぼれ。ノスタルジックな風情と海、古くからのお店と移住者の始めた新しいお店、平日ののんびりした様子と休日の観光客の賑わい。この町なら新しいことができそうだと感じ引越すことにしました。

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物件は元々お米屋さんだったらしく、いかにも昔の個人商店という造りです。土間がかつて店をしていたところで、その裏側の部屋と2階は居住スペースになっています。住居として使えて、プライベートな空間とは違う開かれた空間がある。これが、自分だけで使うスペースではなく、メイカースペース的に開放することに決めた決定打でした。

ミニマムな運営で気張らず続けたい

普段半分閉めているシャッターをオープンデーには全て開け、外から人が入りやすいように。 普段半分閉めているシャッターをオープンデーには全て開け、外から人が入りやすいように。

この自宅兼メイカースペースを「Farmtory-lab」と名付け、現在は毎月第一日曜日をオープンデーとして、外部に開放しています。ラボに必要なものを作ったり、機材や作れるものの説明をしたり、機材の体験をしてもらったりと、今のところいろいろ無料でやっています。運営らしいこととしては、告知をして掃除をするくらい。講習やワークショップなどは特に用意せず、目の届く範囲で対話しながら機材を使ってもらうようにしています。

準備運転中ということもありますが、疲れない運営にしたいという考えから、上記のような運営形式にしています。がんばりすぎて無理をしてしまうと、調子を崩してしまったり楽しくなくなってしまったりします。イベントを用意していたこともあるのですが、力尽きて結局続けられなくなりがちでした。そのため今は続けられることを第一に、ゆっくりしたペースでやっています。

少しずつメイカースペースらしく作っていくのが楽しい

オープンデーに来てくれた人たちと一緒に、壁に有孔ボードを設置。 オープンデーに来てくれた人たちと一緒に、壁に有孔ボードを設置。

現在(2021年11月)は引越から約4カ月。少しずつメイカースペースらしくなってきましたが、初めは何もないところから徐々にスペースを整えていきました。

引っ越ししたばかりの頃。なにもないスペースに機材や荷物だけがありました。 引っ越ししたばかりの頃。なにもないスペースに機材や荷物だけがありました。

内装や什器が整う前から、板を渡しただけの仮の机に機材を置き、オープンデーを始めました。そしてオープンデーで来た人に手伝ってもらいながら、DIYでスペースを整えています。主にオープンデーの参加者に作業を手伝ってもらい、残った作業は次のオープンデーまでに自分で終わらせることが多いです。

看板や入口の表示も作りました。 看板や入口の表示も作りました。

まだまだ進行中で、例えば椅子はありません。ただ、スペースを作ること自体が面白いですし、オープンデーのコンテンツにもなります。全部作ってオープンする、ではなくて、できた分だけオープンする。常に工事中というスタイルで始めています。

道行く人に向けた展示スペースは興味を持ってもらいやすく作ってよかった。 道行く人に向けた展示スペースは興味を持ってもらいやすく作ってよかった。

オープンデーにふらっと人が遊びに来る

機材の説明や体験をしています。この日はリクエストに応えて表札を作りました。 機材の説明や体験をしています。この日はリクエストに応えて表札を作りました。

月に1度のオープンデーには、友人が観光がてら遊びに来てくれたり、ちょっと珍しい機材(Shaper Origine)を体験してみたいという人が来たり。地元の人が「気になってたんだよね」と話を聞きに来たり、近所の子が綿菓子機を持って遊びに来たこともありました。数は少ないですが観光客の方がふらりと寄って、話を聞いていかれることもあります。

10月のオープンデーの様子。観光地なので遊びがてら東京から来る人も。 10月のオープンデーの様子。観光地なので遊びがてら東京から来る人も。

立ち寄る人数は半日で2〜10人ほど。今は東京からの知人が多いですが、地元の人や観光客の人も来やすいようにしようとしています。

マイクロメイカースペースのお金の話

マイクロメイカースペースをやろうと思ったときに気になることの1つがお金です。大きいのは場所の費用と機材の費用かと思います。Farmtory-labの場合、場所は自宅ですし、機材は元々あったものなので、三崎のスペースをやり始めるための直接の費用としては棚や机などの什器の材料費5万円程です。

三崎は東京都内より家賃が安く、一軒屋でも東京の1Kの部屋で一人暮らししていた時と同じくらいの家賃。また、オープンデー以外は土間を在宅勤務スペースとして利用しているため、月1回として按分するとワンコインくらいです(本格的に事業用として利用する場合追加で費用がかかりますが、週1回以内の利用であれば居住用契約でOKという契約で大家さんに了解をもらっています)。

一番初めに買った3Dプリンター、printbot jr。なかなかきれいに出力するのは難しかったです。 一番初めに買った3Dプリンター、printbot jr。なかなかきれいに出力するのは難しかったです。

機材は7、8年前から徐々に購入をはじめ、最初は会社の給料から趣味費として捻出していました。初めて買ったのは4万円台の3Dプリンター「printbot jr」(写真)、2014年ごろに3人で割り勘で買いました。そのうちにだんだんとものづくり系の仕事をいただけることもでてきて、その収入で新しい機材を買うなどして機材を増やしていきました。最近では趣味で買うには少し高額な機材(レーザー加工機やshaper origin等)も購入しています。

なんだかんだで100万円以上使っていますが、機材を買うのが好きという自分の趣味によるところが大きいです。マイクロメイカースペースという点でいえば、機材をそろえることにはこだわらなくていいと思います。また、消耗品やちょっとした工具等はFarmtory-labの同人誌の売り上げや有志のサポートで賄っています。

機材と経験をおすそ分けすることで自分のものづくりをより面白く、持続的にする

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「商売にならないでしょう?」と言われることもあります。メイカースペース運営を本業にしたいわけではなく、かといって自分だけの趣味にしておくのはなんだかもったいないような気がして、自分にとってはシェアするのは自然なことだったので改めてなんのためかと聞かれると答えるのは難しいですね。あえて言えば、自分の創作活動を面白くするため、自分のものづくりを持続可能にするために工作スペースを「開く」という方法をとっているのだというところでしょうか。他の人との交流があることで新しいアイデアが生まれたり、プロジェクトが生まれたりすることがあります。また、地域の人たちとのつながりも持ちやすく、そこからちょっとした仕事をいただいて、材料や機材の費用を回せることも。

自分の機材や経験をおすそ分けするような感覚で、来た人にデジファブの楽しさを味わってもらう。それが巡り巡って自分の作る活動をより楽しくしてくれる、可能性を広げてくれるのではないかと思い、オープンデーを行っています。今後は、今の「生活に必要なものをつくる」他にも、地域のお店と協力して廃材の利用をしたり、地域の特徴を生かしたものづくりなどなど、よりローカルを意識した活動をやっていきたいなと思い描いています。

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